[JR西日本の事故について]

「どうして・・・こんなことになったんだ!」
出がけにテレビから聞こえてきた怒号です。振り返ると、怒り泣く遺族。祭壇の前で土下座するトップ経営者。
「人生を台無しにして、申し訳ありませんでしたーっ」
「そんなこと聞いているんじゃない!!!」

「どうして?」(???) 「息子を返せ!」(・・・)
トップ経営者は土下座しながら「答えようがないことを言われるものだ」と思っていたかもしれません。が、伝えられる「日勤教育」というものからすれば、まさに因果応報。あれは教え育むものではなく、答えようがないことを問う査問であると思います。
事故原因については、ここ10日余り、さまざまなことが言われてきました。僅かな時間のなかの一瞬の直接原因で死者107名、負傷者400名以上の大惨事。亡くなった方の無念。その何倍ものご家族の悲しみ。直接原因をなしたであろう運転士のご家族。同情して虚偽の報告に同意してしまった車掌の苦しみなど、思うにつけ凄まじいことです。社会保険労務士の立場から見ると紛れもなく労働災害であり通勤災害です。労働基準監督署の職員の方々のご苦労まで偲ばれます。
今回は、このJR西日本脱線事故について、答えようがないなかで、少し申し上げたいことがあります。
「どうするんだ!」と遺族から問われて、経営者は「安全/対策/を向上させる/よう/最大限/努力します。」これがいかに意味のない腐れ言葉であるかは、これまでも繰り返し語ってきましたので、今回は申しません。

1. JRの人口構造は?

国鉄がJR各社に分割民営化されたのは1987年。約18年たちました。その間、そうとう職員数を減らしてきたと思います。民営化当時は、リストラというよりは相当の無理を通した「パージ」。あんなことは普通の民間会社では考えないほうが無難です。時間が許してくれるのであれば、一番無理なく人員削減するには採用の抑制です。ここで「人員削減ハンターイ」などとは申しません。問題は、緩い状態から引き締めていけば、JR職員の人口構造は働き盛りの中堅から若年者にかけてガッポリと抜けているのではないか?ということです。会社が18年という永い年月を経れば、そのなかの社員も18年、年を取るものです。次代の一人前社員の促成栽培が必要になります。23歳、運転歴11カ月。しかし、マニュアル与えて査問して、能力が向上するわけではありません。技術やノウハウの断絶を許すとしたら、なぜ企業なのでしょうか?

2. 目的と目標はズレていないか?

JR西日本は、一連の報道のなかで、商業主義とか利益第一主義とか成果主義とかの批判を受けています。
ここで申し上げたいことは、「稼ぐ」のは大切なことです。売れてナンボ。儲けてナンボです。売れるということは「顧客に支持」されていることです。儲けるということは「付加価値を生み出すシステム」になっているということです。稼ぐということはなによりも・・・「自立」していると言うことです。みな貴いことです。
私鉄との競争は当然。JR西日本は完全民営化になって約4年。形ばかり名ばかりの「新・民」と較べて・・・
本年度、約5000人のJR西日本大阪支社員に配布された支社長方針の「5つの課題」のうち1番目は「稼ぐ」で、「安全輸送」は2番目だったということです。
机の上で経営計画を考えると、あれもこれもと総花的になりがちですが、総花的になった場合、この1番目は大事なものになります。最重要ゴールです。
その上位であるJR西日本の「経営の基本的な方向」の1番目は
「お客様の安心と信頼を、より確かなものとします。」
その内容の一番目は
「安全安定輸送に一層努めるとともに、安心して選択して頂けるサービス・商品を提供し、お客様に信頼される企業グループを目指します。」
そして、さらに上位の概念である、会社が発足して以来全社員で共有しているという「JR西日本経営理念」の一行目は
「JR西日本は、人間性尊重の立場に立って、労使相互信頼のもと・・・」
問題は、目的と目標、そして「日勤教育」や勤務ローテーションなどの日常の運営実態、はたまた乗り合わせた社員への出勤指示、ボウリング大会・・・必要であろう賃金改革に同意できない労働組合の不信にいたるまで、筋が通っていないということです。
トップ経営者は、そこを点検しなければなりません。

阿世賀 陽一