[活殺自在−マネジメントについて]


1.「夢」に日付を!


 お盆に故郷に帰った時、親戚の家のテレビで偶然、「居酒屋社長の学校改革」というドキュメンタリー番組を見ました。従妹の長男(以前、ボブ・サップの話しをした少年・・・大きくなったものです。)が「これ知ってる。先生には厳しいけど、生徒には優しいんだ!」と言っていたので、再放送だったのでしょう。
 以下、夏のお正月気分で私が一度だけ見たうろ覚えのノンフィクション、それを元にした私のフィクションとしてお読みください。

 「居酒屋社長」とはワタミフードサービス株式会社の渡邉美樹社長です。「学校」の名は郁文館。渡邉理事長は、再建が必要であったその学校を「理想的な学校にする」という志を持ちます。
 ミッションは「子どもたちに夢を持たせ、夢を追わせ、夢を叶えさせる。」
 理事長として講義をしていました。
 「君たちには、夢があるでしょう。その夢に日付は入っていますか?」

 「郁文館」のホームページを検索してあけてみると、やはりトップページに、ジワーと出てきます。
 「『夢』に日付を!」
 良く知っていた言葉とはいえ、衝撃です。

 私風に、前後を加えさせていただければ
・人の「願い」や「望み」が結果イメージになった時、それは「夢」になります。
 「夢」は、広がります。
・「夢」に日付が入れば、それは「目標」になります。
 目標でなければ、「夢」は見果てぬ「夢」のままです。
・「目標」は「目的」に適うものでなければなりません。

2.顧客とは何か?

 番組のヒーローは、渡邉理事長の要請で就任した竹村健一さんに髪型が似た校長先生です。
 校長先生は校内を巡回し、怠慢な授業や生徒指導をしている教師を厳しく処断していきます。
 黒板に大きなヨーロッパの地図を書いて「地理」を教えている教師を見つけ、教室に怒鳴り込みます。その教師は自分の旅行体験を話していたとのこと。自分の体験を題材や導入部にして教えることは悪いことではないのに・・・と思いましたが、その授業は「理科」の時間でした。
 外国人教師に怒鳴っていました。教師は言うことを聞かない生徒に「ゲラウェイ」とでも言ったのでしょう。
 「うちの生徒を排除するな!出ていくのはお前だ!」
 顧客思想です。生徒を顧客と捉えることはおかしなことでしょうか? 師弟関係は客商売ではないと思う人がいるかもしれません。
 顧客とは金儲けの相手のことではありません。成果とはお金のことではありません。
いくら儲けたとしても、その対象から恨まれたり、対象を不幸にしたりするとしたら(オレオレ詐欺とか悪質リフォーム業者のように)、それは成果ではありません。お金は成果についてくるものです。
 顧客とは、人が良い仕事をして、満足をしていただく、全ての対象です。

 (話しは飛んで・・・)ある若い製造技術者が、
 「わかりました!すると、私の直接の顧客は『次工程』ということですね。」
 (嗚呼、この人は鋭い・・・)
 「その通りです。そして次工程の次には営業へ、さらにフィードバックという観点からは『前工程』も、商品企画も(前に遡っても、進んでも、本来の顧客に円環しますね。)全て、顧客です。」

3.真実の自白

 校長先生が校庭を歩いていると、2階の窓からその名前を呼ぶ声がしました。授業時間中でした。
 「今、俺の名を呼んだのは誰だ!」(教師を含めて、全員無言・・・・・・)
 「まあいい。俺は君たちが何をしても文句は言わない。2つだけ言う。
 第一に法律を守れ。
 第二に勉強しろ。学力を上げろ。それだけだ。」
 この校長先生は正しい。

 生徒にそう言って引き揚げる校長先生の背中からはメラメラと「怒り」のオーラが立っていました。

 校長室に、その担当教師が「謝り」に来ます。
 「校長先生に、大変なご迷惑をおかけしましたことを・・・云々」
 対象を取り違える大間違い&腐れ言葉。
 「迷惑?・・・確かに『迷・惑』したよ。それで・・・今後、どうするのかね?」
 「生徒の集中力が/向上する/よう努めます・・・云々」
 主語曖昧、自動詞と他動詞のすり替え&腐れ言葉。
 「だから・・・君は、どうするんだ?」
 「二カ月後に迫った私の『ビデオ研修(授業をビデオにとって他の教師の批評を受けること)』において、授業技術の向上を図り・・・云々」
 この先生はわかってない。
 かつ、問題の先送り、組織イベントへのお追従と前もっての転嫁と丸投げ&腐れ言葉。
 「もういい!・・・辞めたまえ。君は教師に向いていない。」

 あらあら性急な。
 私なら・・・
 「かけなさい。
  君は、あの時のことが、良くなかったと思ったから、ここに来たのだろう。」
 「    」
 「その時、君は何をして、何をしなかったのかね。」

 とか・・・
 「    」
 「君は、『教・育』をしていたのではなかったのか?」
 「    」
 あるいは・・・
 「それは、そんなに難しいことなのか?」
 「    」
 さらに・・・
 「『できない』と君に言わしてめているものは、何なのだろう?」
 「    」
 と、そのように問うて、
 「明日・・・もう一度、ここに来たまえ。」
 
 結局、次の日『辞表』を持ってくるか?
 何か掴んでくるか?
 考えてもらいたいものです。顧客のために、組織のために、自分のためにも。
 まともな真実の言葉で。行動を前提とした、モノでなくコトを。

4.活かすも殺すも

 校長先生は、教師を集めて厳しく説教をして、最後に少し弱く・・・
 「簡単に、解雇というわけにはいかないようだが・・・」
 労働組合とか相談機関などに、労働基準法第18条の2(解雇権の濫用)あたりについて、注意でもされたのでしょうか?
 私はテレビを見ていて、この校長先生をなんとか応援できないものかと思いました。
 それでも退職する教師は後を絶たず、頑張る教師にも疲れが見えます。危険を感じた渡邉理事長と校長先生の会話。
 「もう限界だ。」
 「締めあげて、来年の春までに成果が出始めたらスタイルを転換するつもりだった・・・」
 「そこまで待てない。」
 校長先生は退職します。
 渡邉理事長の判断は経営トップとして正しい。
 改革への真摯なプロセスといえども、結果、潰れてしまえば、元も子もないということです。
 校長先生は本職の大学に戻り、番組のインタビューを受けます。
 「あの頃の私の顔は、恐い顔をしていたと思う。」
 限界まで締めあげていたのは、自分だったのです。

 この校長先生に何が不足していたのでしょうか?
 組織風土を変えていくことは大変なことです。しかしながら、
 人はどうにもならない人ばかりではありません。
 また、一人の人のなかにも良いところと悪いところがあり、良いときと悪いときがあります。
 否定することも、強制することも、承認することも、委任することも、締めあげながら緩めることも、一人のリーダーが同時にできないことではありません。
 状況と相手に合わせることは妥協でしょうか?
 目的と目標と成果への意志があれば、自他共に、活かすも殺すも自在であることが、自らを「主」となすことであると思います。

(阿世賀 陽一)