[成長と転落(反対行動)]


われわれは「ヒト」として生まれ、
     「人間」として生きる。(または、生きざるをえない。)
  しかし死ぬときは、何であるのか?
           おそらくは「自然」としてであろうが。

1.愛している人を殺す。

 15歳の高校1年生の少女が自宅で刺し殺された事件がありました。朝のワイドでそれを見たときは、50カ所以上の刺し傷があったことと被害者の若さから「15歳でそんなに蓄積された恨みを買うものだろうか?犯人は男ではないだろう。」と思いましたが、男でした。しかし「同じ団地内に住む幼なじみで、小・中学校も同じだった。」「高校になってから急に冷たくなったのでやりました。」ということを聞いて、私としては「・・・そのようなことか」と思いました。
 テレビでは「思春期の少年の妄想が・・・」と、コメンテーターが「自分は大人です」という顔をして話していましたが、少年問題というよりは、実に人間らしい破滅的な行動が低年齢化したという感想です。
 「愛している人を殺す」
 「自分にとって、大切なものを壊す?僕には理解できないよ。君は壊れているね。」と、鉄腕アトムに言われそうな、極めて人間的な行動です。少年と少女が「彼氏」と「彼女」のような関係、あるいは、より幼い頃に「ボーイフレンド」「ガールフレンド」(レトロな語彙!)と言えるものであったか、または最初から一方的な片思いであったかということは、この際、あまり関係ないことです。自分の環境の中で意識する一つの対象であったであろうことで、充分です。小学生から高校生まで、けっこう長い『時間』は、環境も対象も、そして自分自身も著しく変化していく期間です。差異が起こるに充分な時間です。
 この少年には、変化を拒否するものがあったのではないかと思います。そして前向きに変化していく対象に相対すると、自分は全否定されることになります。事実としては、少年を否定しているのは自分自身なのですが・・・。

2.仕事を抱え込んでミスをする。

 仕事を、自分では処理しきれないほど抱え込んで、自らの意志で苛酷な長時間残業などして、集中力を無くし、思わぬミスをして、そのミスをカヴァーするために、また長時間残業などして、ミスを拡大し、組織を危うくしていく。そのような人がいます。
 彼は何のために仕事を抱え込むのでしょうか?
 どうして上司・同僚に危機を告げないのでしょうか?
 会社に貢献するためではありません。困難を乗り越え、未来に向けた、ほんとうの成果をあげるためでもありません。たいていは悲壮な顔をしています。そして『保身』が見えます。それで成果などあがるわけがない。

3.推進しながら抵抗する。

 改革が必要な会社や事業体で、総論賛成・各論(絶対!)大反対という場合があります。中にはそれを推進すべき立場の責任者が、本人は気づいていないのか、隠しているのか・・・「アアでもないコーでもない」と言って抵抗の中心を担っている場合さえあります。すでに家に火がついているのに「・・・それは、いかがなものか・・・」などと年寄り臭いことを言って道連れを増やそうとする人もいます。傍からは、周りからも、部下からも、それは見えるものなのですが・・・。部下に嫌われたくないと思って言動し、深く嫌われている。
 彼らが守ろうとしているものは何なのでしょうか?

4.反対行動

 人間の価値は可能性にあります。
 しかし、誰もが成果や目標に向けて自分を磨き、自分を創り、成長していくわけではありません。
 転落し、その結果、自分ばかりか、実に!多くの人々を巻き添えにして、不幸にしていることがあるものです。「私にも自分の仕事に誇りがあります。しかし、病気がちの妻を思い・・・」などと言う人の妻は、おそらくはとても不幸であろうと思います。「オジサンも壊れているんだね。」と、またまたアトムに言われそうです。
 さらに、「自分を守るために、組織を恨み、自分自身を壊していく。」そのような人もいます。それは、2階に住んでいる人が憎いからと言って、自分の家の大黒柱に斧を入れているようなものです。やがて家は、彼を押し潰しながら倒壊するでしょう。

5.保身

 顧問先様のコンピテンシー(ハイパフォーマーの行動スタイル)を見ようとする時、ときおりマイナス・コンピテンシー(反対行動)の人を見ることがあります。その共通した第一歩は『保身』です。
 人も組織も歩み続けなければならないものです。
 その時、一部分が、例えば右足だけが「動くのはいやだ!」と止まれば、たちまちに、ひっ転ぶという道理です。
 そもそも、何に向かって歩いているのか。
 夜道に迷った時に大切なことは星(ミッション)を見ることです。星について語ることです。
 止まったエスカレーターを歩くはめになると、実に体が重く感じられます。
(「降りエスカレーターを駆け上がる勢い」という言葉があります。それは素晴らしいことですが、それとは比喩の対象が違います。)
 人や組織が輝く時は、昇りエスカレーターを駆け上がるときです。

(阿世賀 陽一)