「60歳台前半/全員現役時代の賃金決定 完璧シミュレーション」



2006年5月19日 日本法令刊
人事労務のための年金研究会 共著
価格:定価3,780円(本体3,600円)

「本書を出版するにあたって」より
 
わが国は世界に例を見ない急速なスピードで高齢化が進み、そして今、消費と生産の両面で戦後社会を担い、支えてきた「団塊の世代」が60歳定年年齢のラインを越えようとしています。
高齢化とは、全人口に対する65歳以上人口の割合により計算されますが、国連の定義により、7%を超えると「高齢化社会(Ageing Society)」、14%を超えると「高齢社会(Aged Society)」とされています。日本の高齢化率は2003年ですでに19%ですが、2014年には25%と、国民の4人に1人が65歳以上になると推計されています。日本は、まさに高齢大国に向けて突き進んでいます。
しかし、複数の調査による「日本人は高年齢者になっても働く意欲が高い」という結果は、同じく高齢化に悩む先進諸国の中では、ひとつの希望であるとも考えられます。

来るべき高齢大国への対策の一つとして、1995年4月1日に在職老齢年金制度の改正と高年齢雇用継続給付の創設があり、以来この両制度を活用して「高齢者がいきいきと生活できる社会を構築し、労働の意思と能力を有する高齢者については、本人の希望に応じて、少なくとも65歳まで働くことができるように」(白澤辰夫氏著「60歳からの得する賃金のきめ方・もらい方」より)との趣旨で、さまざまな努力がなされてきました。
その後10年のうちに両制度は併給調整や改正を重ねて複雑化してきましたが、60歳前半全員現役時代による、ほんとうのニーズはこれから始まるのです。
まさに現在は、「得する制度活用」から「必要である制度活用」という機会です。

2004年6月に改正された高年齢者雇用安定法により、この2006年4月1日より年金の受給年齢の引き上げに合わせて、@定年年齢の引き上げ、A継続雇用制度の導入、B定年制の廃止等いずれかの「高年齢者雇用確保措置」を実施しなければなりません。
本書はこれらのうち、労働条件の変更を伴う再雇用等の継続雇用制度を前提としたものです。
1995年の時点では「若年者の減少」ということで、さほど問題にはなりませんでしたが、現在は、長期間の不況や短期的業績を求める風潮から「フリーター」「ニート問題」に象徴されるような若年者の就職難、非正規従業員化によって、社会や企業にとっての、世代の連続性、技術・ノウハウ・事業継承を困難にさせているという新たな問題が顕在化しています。
若年者も10数年後には中堅層になります。バブル崩壊後10数年の新規採用抑制によって、その担い手である中堅層を欠いている企業はすでに多く見られます。
ここで留意しなければならないことは、高年齢者の賃金は若年者と比べて当然ながらも高く、就労人口も高年齢者が事実として明らかに高いということです。高年齢者雇用確保措置、特に定年の延長や廃止を実施すると、制度上の賃金カーブを上回る、60歳で内転してきた原資カーブの終着点が遠くなり、まさに横にあがる超ベースアップともいうべき負担増になり、加えて若年者雇用がより深刻な影響を受けることが考えられます。
高年齢者の雇用延長とともに、若年者雇用は必要不可欠であり、同時進行で取り組まなければならない課題です。

エイジレス社会の実現、そのためには若年者から高年齢者までの全世代を見渡したうえでの「人材育成」がキーワードになることでしょう。

本書は、1995年12月に「60歳からの得する賃金のきめ方・もらい方」(日本法令刊)を出版され、多くの企業にアドバイスされてきた社会保険労務士白澤辰夫氏に直接の指導を受け、様々な制度改正を経てもなお、在職老齢年金制度と高年齢雇用継続給付の併給に関するアドバイスと手続きを重要な業としている社会保険労務士を中心に結成された東京都社会保険労務士会登録自主研究グループ「人事労務のための年金研究会」のメンバーが、現在の両制度の活用法をわかりやすく解説し、社会のニーズに応えることを目的としたものです。
 この両制度の活用、および関連した企業の賃金・人事労務問題を解決していくためには、社内の人事担当者だけではなく、専門の社会保険労務士から適切なアドバイスを受けることをお勧めします。

2006年4月
                      人事労務のための年金研究会
阿世賀 陽一