ミルキーは(永遠に)ママの味


 2007年の新年 明けましておめでとうございます。
 昨年からの「やや良い」景気によって、今年の春にはしばらく死語に近かった「ベース・アップ」という言葉が聞かれそうです。ベース・アップとは、賃金表に沿った個々の社員の(もちろん人事考課による)定期昇給とは別に、賃金表を全体的に上向きに書き直すことです。
 賃金表のない会社では、例年よりも少し昇給圧力を感じられることになるかと思います。とは言っても平均で1,000円くらいのことです。盤石に安定した高成長は望めない今の時代、人事戦略的に業界水準や若年者の育成と生計費などを考慮しなければなりませんが、なるべく高業績による余力は賞与に反映していただきたく思います。

1.富士の次は不二家

 昨年末は、「富士山と品格」について書かせていただきましたが、1月は「不二家」です。
 不二家といえば・・・高度成長時代、普及を続けるテレビジョンで「鉄人28号」など横山光輝の男子向けシリーズで売った一粒300メートルのグリコに対する「オバケのQ太郎」「パーマン」など、藤子不二夫のほのぼのとしたイメージ・・・いや!それ以上に「ペコちゃん」については、記憶の源流を遡れる限度と同じくらいの・・・オタクの世界ではその店頭人形が数10万円で売買されるという(おおむね盗品ではないかと思います)・・・子供や昔子供だった者にとって、今も昔も変わらぬ、変わってほしくないブランドです。
 しかし、化天の内を比ぶれば、夢幻のごとくなり。滅せぬ物のあるべきか。

2.反対行動の魔の時

 「発覚すれば雪印乳業の二の舞いは避けられない」と認識し、行動し(行動せず)まさに「雪印の二の舞い」になっていく反対行動(「成長と転落(反対行動)」参照)の、企業としての典型になりました。反対行動のはじまりは保身にあります。保身によって身を保つことなく滅びに向かっていくのです。
 社内調査チームが報告したのは昨年11月。社長が会見し、洋菓子販売の中止などの対応を取ったのがお正月+連休も明けた1月11日。誰もが
「クリスマスには売ったのね」
「それまで、わざと黙ってたんだわ」と思います。

 確かにケーキ屋さんにとって12月は普通の月ではありません。クリスマスは、日本人が一斉にケーキを食べる日です。
「イブに彼氏とデートしたいから年休とりたいんですけど」は、許されないことです。
「君はケーキ屋として、この日のために・・・1年 働いてきたのではないのか」
 
 それほど大切な'06クリスマスのために・・・そのクリスマスを約100年近く重ねてきた不二家に次のクリスマスはあるのでしょうか。
 11月の時点で事態の重みを受けとめきることができずに過ごした2ヶ月間は、まさに反対行動の魔の時でした。

3.反対行動の進展

 当初は、消費期限切れ原材料の使用はパート職員による判断と説明していたそうです。やがて
「工場長や製造担当幹部らも使用を認めていた」
「ルールに添えないベテラン従業員がやった・・・」で、見る者の怒りを決定的にしました。
 それは、小出しにしていた問題が、実は組織的にシステム化されたものであり、さらに上から下まで、部下のせいにしているということです。
 お決まりの商品撤去や株価暴落にはじまり、ネズミ・細菌・蛾の幼虫・蚊のような虫・元従業員の告白・・・。
「不二家を叩け!」という編集長やディレクターの大号令が聞こえてきそうです。

4.存在理由のズレと統制

 危機の時のリーダーシップの在り方は組織の運命を左右するものですが、それよりも大切なことは、やはり普段からのおこないです。

 不二家に、太陽は輝いていたのでしょうか?(「大地と樹木と太陽のモデル」参照)
 そのホームページには経営理念として
「常により良い商品と最善のサービスを通じて、お客様においしさ、楽しさ、便利さ、満足を提供し、社会に貢献することが不二家の使命である」とされていました。
 どんなに立派なミッションでも曇れば、ただのキレイゴト・スローガンです。

 あと・・・他人様の会社の経営理念を云々することは、たいへん失礼なことですが、どこからかの出向社員が多数決で決めたような、「らしさ」が見えない文章とは思います。

 私見を申せば、存在理由でもあるミッションとしては「ペコちゃん」「ミルキーはママの味」そのものの方が衝撃的ですね。
「われわれは、ペコちゃんである!」
とか
「ミルキーはママの味であるという信念と信頼を、われわれは次の100年、全世界のママとパパと子供に広めていくだろう」
のほうが良いと思います。

 経営者の成果実現行動能力の指標には「存在理由を明確にし、それを明日に活かし、それが現実とズレていないかを見ること」が含まれていると思います。

 株主や利害関係者等に外部コントロールしてもらう「コーポレートガバナンス」(そう思うと、雪印も不二家も、労働組合は何をしていたのでしょう)や経営目標の達成や事業の有効性を第1に掲げながら予防機能、点検機能、自浄機能を構築する「内部統制システム」がクローズアップされているのは、そのような必要の現れです。

 そして社員に対しては・・・。
 社員が守るべきルールや約束は、新入社員が入社時に署名する誓約書の「就業規則を遵守し〜」という基本的なことだけではありません。納期や数値目標など、さまざまな状況のなかで仕事をしていくうえで、社員は会社の一員として、顧客や社会(法令を含む)の信頼に対して守っていかなければならないものがあります。
 社員(特に幹部の方)には、信賞必罰だけではなく、会社の使命と自分の仕事の社会的役割を理解し、誇りをもって、状況に対応していける強い「誠実性」を、若いうちから、昇格評価項目に加えて育成していくことをお勧めします。

(阿世賀 陽一)