大阪府の「給与」

1.知事の賃下げ闘争

 大阪府の橋下知事が一般職員の給与を平均12%(若年者4%から最大16%)カットすると言って、府の労働組合と団体交渉しているシーンが、テレビのワイドショー番組で何度も放送されていました。徹夜の団交で7時間、その後に別の労働組合と続けて4時間。若くなければできないことです。
 労働組合は「平均5%なら認める」と言っていました。その他に
 「財政再建を考えるのはあんたの責任じゃないか」(それを考えた結果がこれなんだろうな)
 「国から金を取ってくれば良いじゃないか」(その国は誰から金を取っているのでしょうか?)
 「志気に影響する!」(それは労働者側からの言葉ではないでしょう)
 どうも人間(組織でも)自分のことになると、端から見ていても旗色が悪いことを言うものです。そこには、むき出しの保身があり、大義など微塵もない。
 そのような人件費の削減や事業の見直しが成功したとして、19年度の繰り越し赤字は50億円、府債残高は約5兆円あります。

2.年収1000万円のバスの運転手

 大阪・・・公務員・・・と言うと、以前新聞に載っていた「市バスの運転手が年収1000万円」(平均年収836万円、1千万円超の運転手211人)を思い出します。そして、その大阪市交通局の累積赤字は、当時で1600億円。
 それは市であり、橋下知事の大阪府ではないのですが、仮にそのような1000万円が5%カットで950万円になっても、16%カットで840万円になっても、大阪市民や国民は納得しないでしょう。
 その頃の賃金相場とも言える平成16年に発行された「大阪の賃金と労働事情(編集:大阪府総合労働事務所)」の定期給与総額と臨時給与総額の合計は次の通りです。

運輸通信業
        初任レベル18〜20歳 277万円 
        全年齢平均       531万円 
        ピークは 46〜50歳  638万円

 その後、大阪市よりも、市営バスの給与水準がさらに高い自治体がゴロゴロあると話題になりました。おそらくは、「大型車を運転するのは危険だから」とかいうことなのでしょう。
 現業公務員になるための逆経歴詐称事件(大卒なのに高卒と偽って応募して入職)なるものものもありました。
 今、公立病院等での医師不足が話題になっていますが(私の実家がある地方小都市の大総合病院も内科がなくなりました)、大学病院が国立大学法人になったとき、「そこで働く清掃員の給与が大企業の部課長並み」と言う話しを、その法人の経営改革について相談された民間病院の先生からお聞きしたことがあります。(それでは、時間当たり賃金では、医師より高いかもしれません)

3.違和感の原因

 そのような給与の話しを聞いて、なぜ感覚的に違和感(乃至「許せない」)を覚えるのでしょうか?
 その決定要因を家に喩えると、賃金の額は「生活能力」という「床」と「支払い能力」という「天井」の間に住んでいる人の「労働能力」の「価格相場」で決まります。
 違和感の原因は「支払い能力」を無視した文字通り「青天井」であることと「相場」とあまりにもかけ離れているからです。労働の対価たる賃金とは思えないからです。(「賃金」ではなく「給与」なのだから当然と言えば当然)
 とはいえ労働条件の不利益変更は、訴訟になれば容易なことではありません。しかもそのような判例法理の要は「労働組合等」です。この3月にだされた労働契約法の解釈通達は、その労働組合「等」の範囲が驚くほど広くなっていますが、もし大阪府の労働組合が過半数組合であり、(世間からの非難轟々のなか)裁判闘争に打って出れば、これまでの判例からは(行列のできる弁護士が束になって応援しても)難しいことと思われます。しかし、「それらに関する我が国社会における一般的状況」からの「合理性」として、どうなるか?
 合理性とは、変化するものですから。

 しかし、そのような思いきった賃下げに一度くらい成功しても「焼け石に水」と言うものです。(5年くらい連続して繰り返されるなら改革は進むでしょうが・・・・・。)

4.点ではななく線

 賃金とは、上がり下がりする「点」として考えるよりも、例え中途入社が多い会社でも、基本的には20歳前後から60歳過ぎまで40年間にわたる「線」として考えるべきものです。  
 「線」とは賃金カーブです。
 「点」として数%の上がり下がりがあっても一過性のものです。しかし、わずかな数%の「角度」を見過ごして放置すると、気がついた時にはパンクしています。
 モデル賃金カーブが重要です。
 賞与よりも昇給、昇給よりも昇格が大切です。
 モデル賃金カーブを決定するものは何か?統計などを眺めながら考えてきましたが、それは(人材育成と人材活用を基にした)「理念」なのだと気がつきました。

(阿世賀 陽一)