量から質への転換

 現在。平成20年11月下旬。国会の行方はあいかわらず不透明なままですが、そんな中、11月18日(火)に労働基準法の改正が衆議院で、一部修正を経て可決され、参議院に送られました。与野党が協議をして修正した以上、これについては参議院においても可決され、成立するものと思われます。施行予定は、再来年2010年の4月。主な改正点は2点です。

1.年次有給休暇の時間付与

 1つ目は、労働者の過半数代表者との書面による協定により定めた範囲の労働者が年次有給休暇を「時間を単位」として請求したときは、その年次有給休暇の5日以内については時間を単位として有給休暇を与えることができるというものです。これまでアバウトに「半休」を会社のマターとして「与える」ことは認められてきましたが、はたして時間単位に与える休暇が休暇と言えるのか?趣旨に反して、等価交換的な権利としての休暇の時給換算への道を開いてしまうのではないか?
 総務部門としては、「入社6カ月で発生、その後1年ごとの増加」以来の憂鬱な改正。
 「頻繁(ひんぱん)」に行われると、とても「煩雑(はんざつ)」なことになるのではないかと心配です。

2.60時間を超える残業は50%割増

 2つ目。現在、残業や休日労働をさせた場合は、25%以上の割増賃金を払わなければなりませんが、今回その条文に「ただし書き」が加わり、延長して労働させた時間が1カ月について60時間を超えた場合は、その超えた時間の労働について、通常の賃金の50%以上の割増賃金を支払わなければならなくなります。
 125と150。その差は25ですが、たかが25、されど25。量の変化は質的な転換を呼ぶと言います。これまで、業務ニーズの変動と必要労働力を「時間外労働」によって簡便に調整することを柱としてきた我が国の労務政策(というほどの実感はなかったかもしれませんが)を見直さなければならなくなると思います。要は、ワークシェアリングの必要です。
 2つの例外があります。
@労働者の過半数代表者との書面協定により、60時間超−50%割増を支払うべき労働者に対して、その割増賃金の支払に代えて、(年次有給休暇とは別に)通常の賃金が支払われる有給休暇を与えることを定め、労働者がその休暇を取得したときは、それを割増賃金に替えることができるというものです。それはまた「煩雑」になりそうです。
A中小企業については、除外され、3年後にあらためて対象とするかどうか検討することになりました。
 大企業において残業規制がかけられ「中小企業に下請けを」という動きになるかもしれません。
 そして、月45時間を超える分の割増率については、企業規模を問わず、25%を上回るよう「努力義務」が課せられる予定です。
 どうも・・・・、全般的に「助成金」の匂いがします。

3.政府案の「80時間」超

 この改正の当初の政府案は「1カ月について80時間を超えた場合は〜」でした。しかし、この80時間という数字は、最悪の場合はいわゆる「過労死」とされる脳・心臓疾患が業務災害と認められる「長期間の過重業務」のリミットでもあります。
・業務との関連性は、発症前1〜6カ月平均で時間外労働が月45時間以内であれば弱いとされますが、それを超えて長くなるほどに強くなります。
・発症前1カ月間に月100時間、発症前2〜6カ月間平均月80時間を超えるとアウト!
 そして、「過労自殺」や最近、顧問先様で多発しているメンタル不調についても、客観的事実として長時間労働は、業務災害認定の最も重要な要素です。
 それは使用者責任が問われ、民事的な事件にもなり、もう個人に「金払えばいいんだろう」という割増賃金という問題ではなくなります。
 60時間というのは45時間と80時間の真ん中くらい。1日に換算すると3時間弱の残業です。 

4.長時間労働とは何か

 「負け組は、仕事が無くて結婚できない/勝ち組は・・・・長時間労働で、結婚できない」ということが晩婚化や少子高齢化に拍車をかけているという説がありますが、それが「勝ち」であるのか、この機に、それも考え直さなくてはなりません。そもそも50%割増が給与計算で発生するということは、会社にとってどういうことなのか。
 それが「量から質」の問題の本筋です。

「土曜も日曜もありません。売って売って売りまくり売上倍増!業績Vターン!」と言う営業部長がいました。しかし、週労働日5日として、それをさせても「5分の7」。140%です。そして、機械のようにコンスタントに稼働することができない人間にそうさせると、成果は、限りなく5分の5に近くなっていきます。それ以下になる場合もありました。

(もちろん、対顧客等のニーズにより、必要があれば休日・時間外労働は果敢にすべきです。ただし、その場合には、自らの健康管理やスタミナ配分など、周到なセルフコントロールが必要になります。)

 毎日毎日、1日「8分の12」時間、事業場に存在している係長(時間管理役職者)がいました。観察すると、やっていることは限りなく「8分の8」です。やたら昼休みが長い。残業代稼ぎミエミエ。会社にとってその分は損失で、本人にとってはリーダーシップやマネジメント能力が、おそらく永久に成長しない。  

 「売れる時に、売れる人に売っています」と言う他人様(ひとさま)の3倍売る人がいました。「やる気」のオーラが立って、とても明るい表情。
 それは、仕事がおもしろいでしょう。
 集中力とは=「楽しむ」ことです。

(阿世賀 陽一)