やりたい仕事

1.失言・迷言
 出張先のホテルの朝(2月6日)。テレビをつけて・・・・麻生太郎内閣総理大臣の「もともと郵政民営化に賛成ではなかった」には仰天しました。「当時、私は担当大臣ではなかった」にも唖然。
 トップであれ誰であれ、組織にある人は、先人の仕事を引き継ぐものです。トップであるからこそ、必要であれば「見直す」ことや「否定する」ことや「チェンジする」ことを果敢に実行しなければならないことはあるにしても、「もともと私は〜」と言えるものではありません。それこそが「さもしい(自分だけ得をしようという気持ちの見えすいている様子だ−新明解国語事典)」ことに見えます。

2.やりたいことを絞り込む
 もともと(初めて選挙に出たの時の「下々の皆さん」以来・・・・)麻生さんは、失言が多い人と言われてきました。印象に残っているのは(失言かどうかはさまざまな意見があることですが)昨年の12月19日、渋谷のハローワークに非正規労働者向けの緊急特別相談窓口を視察した際、北海道から出てきた若者に対し(「東京へゆくなふるさとを創れ(谷川雁)」と言いたいところですが、そこは、私も、人のことを言える立場にありません・・)窓口に座って、面談した時の言葉です。
「新しい仕事というのは、『これがやりたい』と言わないと、相談される方も『何かないですか』と言われても困る。自分のやりたいことを絞り込まなきゃいかんな」
 社会保険労務士としては「絞り込んだらますます求人にヒットしないじゃないの」と思い、テレビでも「失業者の気持ちを理解していない」等の批判がありましたが、麻生さんが『首相になりたい』と志したように、乾坤一擲の進路相談であれば、とても親身な言葉であったと思います。
「どうせなら、六本木とか、おしゃれなところで働きたい」
(嗚呼・・・・地方出の人は、都会のネオンが世界につながっているように見えるのかもしれません。自分のことを考えてみると。)
「世界中どこでもそうだが、何となく格好いい仕事は給料が安い。力仕事やしんどい仕事は実入りがでかい」
 それがそのまま「実入り」につながる日本社会であるかは別として、労働力の需給関係を言っています。楽なことで「実入り」のあるものはありません。それは確かなことです。
 その求職者は後ろ姿しか見えませんでしたが、相対する麻生さんの表情とその後そそくさと立ち上がったところを見ると、実のある会話ではなかったようです。
 その後も、求人はあるのに応募する人は少ないという雇用のミスマッチに関するニュースは続きます。
 さて、やりたいこととは何でしょうか。さらに、遊びでもボランティアでもなく、やりたい仕事とは。

3.やりたい「仕事」にすること
 麻生さんも、好きでお金持ちの家に生まれてきたわけではないでしょう。
 長じてから、貧乏な家に生まれるよりはマシだったと思ったかもしれません。もっとも、本物のお金持ちだから、そんなことは思考範囲の外であったかもしれません。

 人は、貧富・男女・社会的身分等にかかわらず、どこかで自分の条件を引きうけなければなりません。そして今日それを「活かす」としても「成長する」としても「変身する」としても「化ける」としても、世界を変えるとしても、昨日の自分を引き継いでのことです。そして、やりたい「こと」を「仕事」にすることは、好きに絞り込んだり、選択したりして、実現できることではありません。
 たとえば、魔送球を投げてクビになった元読売巨人軍の3塁手であった父親の強い影響(ほとんど強制)で巨人の投手を目指す「試練の物語」がありましたが、少年はその条件と目的をどこかで自分のものとして引きうけたのです。才能のこともあります。
「たとえ100年生きても、生まれ変わたとしても、エリック・クラプトンやレッド・ツェッペリンのようには演れない!」(まさに、そう思います・・・)
 そう自分を断じ、それを「〜のようには演らない!」にして、3つのコードだけでロックして、時代を創ったのは(破壊したというべきか)パンク・ロックの創始者の1人(誰だったかな?)です。それまた凄い才能・・・・。凄まじいエネルギー。

4.仕事を好きになること
 仕事とは、やりたいものなのか。
(嫌なことは、無理にするものではありませんが・・・・)
 「俺にはこれしかない!」と思ったとしても、そのきっかけを考えてみるとたわいもないことが多いと思います。自分の仕事が好きだと言える幸福な人も、ほとんど偶然のようにその場にあって、課せられた仕事を、なにかのきっかけで少し努力して上手くいって誉められて、または上手くいかないで挽回しようとして認められて「・・・・俺に、あっているかも」と後付で自分をそのように定めているものではないでしょうか。
 夢があるなら追えば良し。しかし夢を探して迷うくらいなら、「好きな仕事をしたい」と思うよりも、「その仕事を好きになる」ことをお勧めしたい
 すでに好きな人は?
 もっと好きになるようにしましょう。

(阿世賀 陽一)