09春闘とワークシェアリング

1.未曾有の09春闘

 昔から「アメリカがくしゃみをすれば、日本は風邪ひく」と言われてきましたが、アメリカが大病を患っている今、桜3月は(肌寒い)春闘の季節。
 大企業でなくても、労働組合や団体交渉がある会社でなくても、労働力の価額の相場や傾向が決まる春闘の行方は気になるところです。
 当初の連合の「賃金も!雇用も!」「8年ぶりに明文化した方針としてベースアップを要求!」(「えっ?!!」とは、テレビを見ていた女房の大声。「・・・・何考えてんのかしら」「連合が交渉するわけではないからね。予想される理由その@組合費で安定的に暮らしていると実感としてわからなくなる。そのA人間、完全にダメ元となるとかけ声だけは大きくなる」)という「かけ声」(や夫婦の会話)をよそに、個別労使間では新聞に「定昇凍結」「実質賃下げ」という見出しが出るようになりました。
 5年程前、「100年安心!年金改革」が国会で論議されたとき「賃金というものは毎年2%上がるものだから」と言う、その他のことについても知ったかぶった年金専門家が毎日テレビに出てきて、そのうち厚生労働省出身の専門家と対決させられて粉々にされましたが、その厚生労働省の現役の方も国会で「賃金は毎年2%あがるものとして」と答弁して、アチャー・・・・(厚/労の厚の人なんだろうなー)。
 そのように、単純なものではありません。2%賃上げなんて・・・・ずいぶんと、昔の話しです。
 その年の春闘の結果は、もちろん個別の労使が経済情勢や物価や経営状態をもとに、右を見たり左を見たり、上を見たり足下を見たり(最後は後ろと相談)して決めるものの加重平均ですが、マクロ的には社会全体の経済生産性と生計費とのバランスで予測されます。
 毎年、社会経済生産性本部の賃金管理士総会に参加して、会長の楠田丘先生が発表される春闘予測を聴いてきました。ここ5年間のその予測と後日発表された結果は
 2004年−予測1.75→結果1.67
 2005年−予測1.80→結果1.71
 2006年−予測2.05→結果1.79
 (この年は・・・・渋かった。「豊かさを 実感しない 好景気」季語は春)
 2007年−予測1.95→結果1.87
 2008年−予測1.96→結果1.99
 昨年を除いて例年「やや経営者側が強かった」で終わっています。
 そして今年の予測は、そのバランスだけでは、驚愕!の0.45でした。しかも、今年の平均定昇見込みは、1.58なのです。
 賃上げとは、定昇+ベースアップの合計です。定昇とは、人事評価によって当然個別に違いますが、平均すると昨年の1年先輩に追いつくという社内秩序、社会秩序です。凍結は、実質の賃下げになります。
 なんと言っても、実質経済成長率予測▲1.67、名目経済成長率予測▲0.23(デフレの時は名目が指標となる)のマイナス成長予測が効いています。そして名目経済生産性は▲1.02。
 しかも、その予測は昨年の11月25日時点にまとめられた年間成長率予測値によります。その頃から今日まで、「成長」はどれほど下落しているでしょうか?

2.リストラか時短か

 経済成長率からマイナスして経済生産性を引き下げるものは「就業者の増加率」と「労働時間」です。
 わが師、法然殿は(いやさ楠田先生は)「残業する奴は○○○に入れなさい」と申されました。
 「時短」か「就業者の削減→リストラ」か。
 残業する奴は、労働者の敵です。

 生産性という理論面からも、総労働時間(全体としては就業者×労働時間)のことが問題になりますが、単純に考えて、会社に仕事と収入が入ってこなくなれば、出るものを抑えないと潰れてしまいます。その支出のうち、多くを占めるものは人件費です。
 しかし、労働力は会社のパワーそのものです。
 そして、生産者は同時に消費者でもあります。今のように雇用不安ないし雇用減少が続けば、景気回復など、夢のまた夢。さらに、日本の労働力がダメになって(失われた10年で、すでにかなりダメですが)外国に頼ればもっとマイナス・スパイラル。

 とは言っても、経営者としては(経済界の責任者を兼ねている方は別として)まず自分の会社を守らなくてはなりません。その場合に悩ましいことは、もちろん人員整理は法律上簡単にできることではありませんが、それ以上に、社員=ノウハウであるということです。昔から、ヒト・モノ・カネのうち、ヒトが大事と言われている理由の一つに、ノウハウ付きの人材は代替が効きにくいということがあります。雇用の切れ目が縁の切れ目。それがとぎれることは、それ自体が大きな打撃ですが、回復にはまた時間とコストがかかります。リスクも増えます。
 緊急潜航して、そのまま浮かび上がることのない潜水艦のようなものです。かつて私はそのような大型潜水艦を見たことがあります。

 人件費を抑えながらの雇用維持は喫緊の課題です。その意味では、このHPの「お知らせ面」でご紹介してきた雇用調整助成金(中小企業緊急雇用安定助成金)の拡充・諸要件撤廃は、実に時宜と当をえた政策といえます。
 長い目で見れば、今春闘での論議や日や時間単位の雇用調整を機会として、雇用を維持しながら景気の変動に耐えていける総労働時間=総労働量のコントロール、すなわちワークシェアリングを日本は、そして企業は本格的に考えていかなければなりません。そのためには、同一労働・同一賃金を徹底し(それは決してみんな平等という意味ではありません)、(少なくても下位等級における)雇用形態間の格差是正(労働条件を上げろという意味ではありません)が課題になっていくと、私は思います。

(阿世賀 陽一)