前向きのワークシェアリング

1.09春闘−凍結と解凍

 未曾有のマイナス成長下の春闘でしたが、大手企業については3月18日にヤマを越しました。労働組合の幹部の方は、「ベースアップ要求にもかかわらず昨年よりも昇給率が減ったところもある」ことに関して「極めて残念!」等申しておりますが、一人になれば、イヤ、幹部同士になればコッソリ派手に慰労会ものと思います。  
 日本経団連会長は、「定昇凍結をしたところがある」ものの「経営側が定期昇給を維持したことは、従業員に最大限配慮した結果である」と話しています。「大手は内部留保があるじゃないか!」との意見もありますがキャッシュフローとしてはどうか?厳しいものがあったと思います。しかし実際、マイナス成長をそのまま反映した結果を残せば、景気はさらに「底割れ」していたかもしれません。
 本当に大変なのは、妥結した経営者も労働者も、そして中小企業も、これからです。
 定昇凍結ということは、春に実施するのではなく、夏が過ぎれば解凍し、秋頃に実施する(かもしれない)ということです。そして来年の春に一定の昇給があるならば(もしそうなれば)「先輩が後輩より少しは上」という意味での「賃金体系維持」ということになります。

2.政労使共同宣言−ワークシェアリング

 派遣切り・・・、期間雇用雇い止め・・・、次は正社員だ!と言われる中、政府・日本経団連・連合などは3月23日、時間外労働の削減、休業、配置転換、出向などによる「日本型ワークシェアリング」で雇用を維持する取り組みを政労使一体となって推進する「雇用安定・創出の実現に向けた政労使合意」を発表しました。
 政府は雇用調整助成金等で支援します。
 また「雇用のセーフティネットの実効を高めるためにも、各社においては社会・労働保険の強制加入の原則に基づいて改めて加入状況を労使で確認するとともに、取引先等に対してもコンプライアンスの徹底を求めていく」としています。

 政労使合意によるワークシェアリング(仕事の分かち合い)は、バブル崩壊後の失われた約10年目である7年前の2002年にもされています。なかでも「働き方」の多様化にもとづく多様就業対応型ワークシェアリングは、結果として非正規従業員を拡大させました。格差を拡大させました。この不況時に失業を拡大させました。
 結果が本来のものと違うときは中身を疑ってみなくてはなりません。
 「失業を余儀なくされている人」「野宿を余儀なくされている人」と同様に「非正規を余儀なくされている人」が多くいる以上、(「私」が意思する「働き方」とは言わないでしょう。(「働く」ことを意欲しない人も確かにいますが・・・・)
 一方、7年前のワークシェアリングが「上手くいかなかったじゃないか」とイロイロ理屈を塗して
「非正規を救うことには、どちらかといえば賛成・・・・」
「オレの給料が下がるのは、絶対反対!
(「この蜘蛛の糸は己のものだぞ〜下りろ。下りろ。」−芥川龍之介『蜘蛛の糸』より)」と言う労働組合員−組合等々は、あると思いますので、今回の危機における「労使一丸となって」は、どれだけ真剣に根気よく取り組めるか・・・・。
 いずれにせよ「リストラかワークシェアか(そのように安易な省略語になった時が、本来の意味と違う日本語になった時です)」とか「痛みの分かち合い」という言い方は後ろ向きです。

3.前向きの3つのワークシェアリング

 わが師楠田先生は、Sharingを「思いやりの分かち合い」と申されました。それは前を向いて、明日を生みだす次の3つのワークシェアリングです。

 狭義のワークシェアリングは、もちろんWORKTime(労働時間)Sharingということになります。アメリカではなく、ヨーロッパなどでそのようなワークシェアリングが成功しているのは、正社員の既得権にメスを入れ、同一労働同一賃金(「給料」は違っても時間比例で労働の価値としての「賃金」は同一)を実現し、かつ「ワークライフバランス」の浸透によります。ワークは人材の活用、働きがい、経済の発展です。ライフは人材の育成、子育て、内需の拡大です。

 2つめは、広くWORKAddedValue(付加価値)Sharing。企業は、株主と経営と社員で成り立っています。それぞれがどのように付加価値を分かち合っていくかです。すなわち「株主配当」と「社内留保」と「賃金」です。
長期的視野での戦略には賃金政策が必要です。

 3つめはWORK Frame(仕事の構造)Sharing。
 それは、雇用形態別に人をあてはめて効率化を追求するだけではなく、生産性の向上を求めていくのです。過度の効率化は労働者を不幸にします。そして生産性向上は労使双方を幸福にします。
 そのためには「生産・成果÷時間」という生産性の公式の「分母の時間量」の短縮だけではなく、改革や創造性ある成果に向けて「分子の質」を高めなくてはなりません。そこに投入する時間をこそ創り上げなければなりません。
「あのお方なら、きっとやり遂げられると信じまする」と
期待された「職責」を、自らチャレンジしていく「役割」として、引きうけるのです。 

 蜘蛛の糸にしがみついて非正規をけ落とす暇があれば、高く昇れということです。

(阿世賀 陽一)