酒井法子の言葉

1.元アイドル(偶像)の転落

 元アイドルで女優の酒井法子が夫の覚醒剤取締法違反容疑での現行犯逮捕と同時に失踪したのは、2009年8月3日のことです。7月21日に、その40日後の8月30日の投開票を目指して衆議院が解散しましたが、まだ公示前でもあり立候補者も出そろってない頃です。

 酒井法子といえば、山口百恵・松田聖子・中森明菜と続くスーパーアイドルの、その中でも新しい顧客を創造し、今も現役のスターであり続ける偉大な松田聖子と同じ芸能プロダクションが、同じ県出身で、交際していた郷ひろみとの「生まれ変わったら〜」破局の後の悪夢のようなエピソード(日本からの国際電話・・・・「わたし、ノリコ。忘れちゃった?」)で強烈な印象として残ることとなったその本名と同じ本名を芸名とし、期待を込めて売り出したアイドルというイメージが記憶に残っています。
(その頃から歌謡番組を見なくなったので、どのような歌を歌っていたかは覚えていません)

 中学生くらいから、そのように期待して、親のように面倒を見ていたという所属するサンミュージックの会長が「最悪のことがあったらと心配だ!」「どうか連絡してほしい・・・・」とテレビカメラの前で悲痛に訴える姿を見るにつけ、その「最悪の結果」を心配したものです。
 そして4日たち「・・・・身延山の山の中にいるとしたら、もう限界か」などと思っていたら、7日に夫と同じく覚醒剤で逮捕状というニュースでビックリ。「妻もやっていた」と話しているという「遊びをせんとや生まれけむ」の夫に、少々男として憤慨しながら翌日、実は東京にいたという本人が出頭・逮捕されて別方向にモア最悪。
 失踪は、逃亡!・・・・どころか「覚醒剤を体内から抜くための時間稼ぎ」という(高度な)隠蔽工作という話に、モア・モア最悪。

「そこまでして隠蔽するなら、まずは部屋を片づけるべきよね・・・・」
「いやいや、あそこで素直に捕まっていれば・・・・」
とは、テレビを見ている視聴者夫婦の客観・冷静な見方です。

「貧すれば鈍」して「窮すれば、自己保身」で、そこから自己の立場をさらに悪化させて転落していく、典型的なマイナス・コンピテンシーそのものでした。

 そしてテレビの酒井法子ものは、お盆が過ぎても、総選挙が政権党の大敗に終わっても、新政権や敗北した党の停滞が話題の中心になっても、まだやっています。
 ちなみに、停滞・悪化・転落を止めるには
「窮すれば変ず、変ずれば通ず」、すなわち「窮すれば、イノベーション」です。

2.模範としての酒井法子
 
 20年以上前のアイドル、酒井法子のことをなぜ覚えていたかというと、その言葉を新入社員研修のネタに使ったことがあるからです。
 スポーツ新聞の芸能欄に出ていたその状況は、
(1)酒井法子のお父さんが交通事故で亡くなった。(その職歴のことは深く語られませんでした)
(2)車の中からは娘の歌が入ったカセットテープが見つかった(というホロリとくるもの)。
(3)その日、コンサートの予定が入っていた酒井法子は、父の死に駆けつけることはせず、アイドルとして気丈にステージを全うした。
 その時の彼女の言葉、
「『酒井法子』とは、私一人のことではなく、事務所のスタッフの方をはじめ、このコンサートに携わった全ての人のことですから・・・・」
というようなことが書いてありました。感動。

 そのような記事を引用し、
「みなさんは、そこまですることはありません。就業規則に則って、慶弔特別休暇を申請してください。ただ、社会人になった以上、今話した酒井法子さんの言葉が意味するところは、頭の隅に置いておいてくださいね」
 当時は、
「スーパースターが来日したら?」
「親を殺してコンサート!」
という若手社員向けのジョークがありました。

 それは後になって想えば・・・・テレビドラマ『チャーリーズ・エンジェル』(見ていなかったのでどんな作品かはわかりません。たぶんアクションもの)に出ていた女優ファラ・フォーセット・メジャーズ(マイケル・ジャクソンと同日に亡くなった方です。合掌。)が、白い歯並びを全部見せる!アメリカ的なスマイルのポスターによって、世界中で爆発的な人気を博したとき、スーツをバピッ!と着た第一ホワイトカラー階層風の女性が、テレビのインタビューにクールに答え
「『ファラ・フォーセット・メジャーズ』とは、企画・宣伝・営業その他の部門を有し、莫大な利益をあげる企業なのです!」
(同じようなことを言っているのに、この日本とアメリカのニュアンスの差・・・・)
と話していたことがありましたが、その影響かなと思いました。

 そのように答えることがスターの模範的な回答であると教えられていたとしても、まだ二十歳前の歌手、酒井法子さんの言葉は、たいへん立派なものだと思っていました。

 今回の行動で、心配していた事務所の会長は辞任、社長は降格、後任未定。

 やはり、人は(組織としても)配偶者等、つき合う「人」には気をつけなければなりません。


(阿世賀 陽一)