「過払い」の次は「未払い」請求

1.弁護士のターゲット

 『〜企業への「残業代請求」急増の恐怖』という文章を読みました。(週刊ダイアモンド2009/12/05)
 三十を少し過ぎたくらいの若い弁護士さん(高井重憲氏)が寄稿されたもので、要旨は
(1)バブルとも呼ぶべき、弁護士や司法書士による消費者金融業者への「過払い金返還請求」(電車の広告にズラーと並んでいますね)が終わりを迎えつつある。 
(2)「弁護士の人数は近年急速に増加している。1995年には1万5000人程度だったものが、2008年には2万5000人を超え、今後も司法試験の合格者数を毎年3000人程度まで増加させることになっている」ことから、弁護士は生き残っていくために「過払い金返還請求」に続く収入源を確保する必要に迫られている。
 それが、「企業への残業代請求」であるというのです。
 そして寄稿は、「企業への残業代請求」が「過払い金返還請求」と同様のビジネスになりうるポイントとそのリスクを解説されています。

 同寄稿には、「司法制度改革の結果、弁護士の世界の競争は激化し、米国並みに救急車を追いかける弁護士が登場しかねない時代になってしまった」と書いてあります。
 弁護士の増員は、アメリカの日本に対する「年次改革要望書」の要望項目の一つです。
 その大儀は、公正な社会→訴訟社会(なんで?)→司法制度改革→その一つが弁護士増員なのでしょうが・・・・。
司法制度改革が始まった頃、こんなアメリカのジョークを聞いたことがあります。
「弁護士を轢いてしまったら、どうする?」
「バックして、完全に殺す!」

2.リスクがある場合はご相談ください

 どのようなことでも少々のモレとしての問題はありますが、思い違いにより、構造的になっていることには、大きなリスクがあります。
 労働法は実態法ですから、机の上で形式的に都合良く考えたような方法は有効ではありません。
労働基準法は、民事的な法律ではなく強制法ですから(だから労基所ではなく労基署)、契約や同意によって免れることができるものではありません。
 第32条で「1日8時間、週40時間を超えて労働させてはいけない」を原則とし、その例外として第36条で「届け出た36協定の範囲で、割増賃金を払って、残業をさせてもよい」ですから「最初から月例賃金に含んでいる」は通用しません。「当社は年俸制だから」は飛んで火に入る夏の虫。(火=労基署の臨検で「百発百中」、これからは弁護士?)
 「世界標準のアメリカは成果主義だから」(最近、それは疑わしい)とコンサルタントが言っても、ここは日本です。歩合給にも、割増部分だけですが、残業代は発生します。
 管理・監督者の認否は、判例では企業側の負け筋です。
 労働したかどうかということは、「使用されたか」ということで、原理的に本人と指揮命令者の間で確認されるべきものですが、その把握義務と責任は、事業主にあるとされています。
・・・・争いになれば、そこが痛い。

(阿世賀 陽一)