技術のトヨタか?

1.「技術のトヨタが・・・・何故?」

 3月の初め、夜、テレビのチャンネルをニュースに廻すと、トヨタ自動車の豊田彰男社長が生出演していました。
 アメリカの下院公聴会で、ここぞとばかり(という気持ちであったろうなと思います)の長時間バッシングを受け、その後のディーラー大会で涙を見せるシーンは何度もテレビで繰り返されていました。
 そしてすぐに中国の北京に飛んで謝罪と説明・・・・。と思えば帰国してすぐに、テレビを通じ自国の顧客(または顧客候補)(&それらの家族)に。

 このようなときの経営トップの姿勢・行動が、その後の企業の命運を左右することは、これまでに何度も見てきたので、その効果はどれほどのことになるかはわかりませんが、私はその姿に勇気と誠実さを感じました。

 先日、中学のミニ・クラス会で、トヨタのディーラー会社の幹部をしている同級生に
「大変だろ」と聞くと
「国内での影響は、まっ・・・・たくない!」と豪語していました。
「なんで?」
「『国産車』は、品質が良いからだ」
「お前、それを外人の前で言ったらダメよ」

 でも今日は、リスク管理の話ではありません。

 ニュース番組のキャスターが
「しかし・・・・技術のトヨタが・・・・何故?」と、豊田社長に迫るように聞いていました。
 そのキャスターは、かつてプロレスの実況中継をしていた時代、横にいる解説者も、リング上で仕事をしている当のレスラーのパフォーマンスさえも、子細関係なく、自分のワールドに巻き込んでしまう人だったので(だからワールド・プロレスリング)「らしい」とは思いましたが、しかし「技術のトヨタ」という言い方は初めて聞きました。

 

2.顧客志向のトヨタ

 「技術の・・・・」と言えば日産でしょう。
 そこで思い出すのは、カルロス・ゴーンがやってきて村山工場を閉鎖した頃、そのようになる前のこととして、我が師から聞いた話です。

 日産の人事部に電話をかけました。
「Xと申しますが、Aさん、いらっしゃいますか?」
「本日、Aは不在にしております。その件はAでないとわかりかねますので、またお掛け直しください」
 やはり「技術の日産」なので、人事部も、個人に「高度な技術」と「プライド」がついているのでしょうねぇ。
(昔の話なので、今もそうであるかはわかりません)

 トヨタの人事部に電話をかけました。
「Xと申しますが、Bさん、いらっしゃいますか?」
「はい、X様ですね。本日、Bは休みをいただいておりますが、代わりにCがX様のお話しを承ることになっております」
(昔から、人事部やその相方の労働組合の幹部を見ると、その企業がわかると言います)

 トヨタといえば、「かんばん」や「カイゼン」そして「品質」ですが、元来は組織でもってする「顧客志向のトヨタ」であったろうと思います。

 カローラが、走行性能などのポテンシャルについては優れていたライバル車種に競争力において一度も負けることなく(でも、サニークーペはかっこ良かった)、なんと今でも存続して売れているのは、単に宣伝力・販売力の差だけではない、顧客に目を向けた車自体への高い評価によるものでしょう。「居住性が良い」とか「乗りやすい」とか。

 

3.訪問客VS受付嬢

 昨年の秋頃から、あるスジに委嘱され、政府の雇用政策(非正規化する若年者を何とかしよう!)の浸透度調査と好事例収集のために、丸の内あたりの大きな企業の人事部を訪問する機会がありました。

 広いエントランスに受付があります。たいていは

(1)企業名等を名乗って
(2)訪問カードに必要事項を書いて・・・その後

「この札をお掛けになって、お待ちください」
 そして、訪問部署に電話をして
(こんな人、来てますけど・・・・)
 それは・・・・、押し売りだと迷惑でしょうし、セキュリティーの問題もあるので当然のことです。

 でも、以下のような企業が(1件ではなく複数)ありました。
 アポの時間通りに受付に着いて
○○の方から参りました・・・・」
「はい、阿世賀様ですね!」
(石火の機。しかも、来客を「掌握」している受付・・・・)

思わずBOXの中を覗くと、社内ネットの端末があります。
(ノートでも、黒板でも良いとは思いますが)

「そちらのエレベーターで、○○階までお上がりください」
(上がって・・・その後、どうなるのでしょうか?)
と思いながらエレベーターに乗り、「ガァー・・・・」と上がって「チーン」とドアが開くと
「いらっしゃいませ。○○の阿世賀様ですね。こちらにどうぞ」と
エレベーターホールに、ご担当が待っている。

 兵法で言えば、敵を知り、先制攻撃して、待ち伏せして、生け捕りにするようなものです。

 私のような一見ゲストに、受付係や人事部がそのようにしているということは、おそらくは、ステークホルダーたるさまざまな「顧客」に対する全部門に浸透しているのでしょう。

 企業の評価は、過去における財務的な指標だけではなく、これからの顧客指向、そのための内部体制、変化への対応力・人材育成力が、一層問われていくことになるでしょう。

(阿世賀 陽一)