昇給と同一労働・同一賃金

1.賃金カーブ維持
 
 この1月に、平成22年の春闘情勢については、昨年度のダメージがあまりに大きかったため「昨年の未曾有の春闘よりまだ悪い」と書きましたが、終わってみると、まあ、そこそこの結果であったようです。
 大手労働組合は、あいかわらず、従来の賃金表とその運用を死守する「賃金カーブ維持」という保守的な闘争方針を断固貫徹したわけです。

2.同一労働・同一賃金

 多くの労働組合は、産業間・企業間・男女間・正規非正規などの雇用形態間において、同一労働・同一賃金の原則を主張します。
 そして高い方にあわせるよう努力することを旨とします。原則は。
 集団的労使関係による運動なのだから、当然と言えば当然。

 確かに!「賃金」とは、ときに見られるヌルイ定め通りに、働かなくても貰ってしまえることもある「給与」と違って、神聖な労働の対価(価値)です。

 同じ価値を生み出す仕事をしているのに、AよりもBが不当に低い賃金であることは、不正義なことであると言えます。
 Bよりも格段に高い賃金をもらっているAが、ほんとうにBと同じ仕事しかしていないのであれば、それは別の方面からも大きな問題です。
 その原因が、Bの「国籍」「信条」「社会的身分」及び「性差」であるならば、労働基準法第3条(均等待遇)及び第4条(男女同一賃金の原則)に違反して違法です。その違反には「6カ月以下の懲役又は30万円以下の罰金」という罰則があります。

3.話は飛んで・・・・、労基法違反

 余談ですが・・・・、労働基準法違反が重大で(サカラッたり、ウソをついたりして)悪質な場合には、そのような罰則が適用されます。
 労働基準監督官は、労働基準法違反の「罪」について、刑事訴訟法に規定する司法警察官(捜査権・逮捕権有り、武器携行は不可、手錠・捕縄・腰縄は携帯可)の職務を行うことになっています。
 使用者が監督官を、他の行政職員のようにナメなめたり、サカラッていたりすると、突然ガバ!と立ち上がって「変身!」します(某監督署で目撃)。 
 まあ大抵は、「変身」される前に・・・・、「是正勧告」を受けた段階で、是正期日までに真面目に改善・是正し、「是正報告」を出して、勘弁してもらいます。

 また労働者は、労働基準法またはそれに基づく命令に違反する事実がある場合、その事実を監督官に申告することができます。それは、よくある話です。その
「申告は、刑事訴訟法第230条の告訴及び同法第239条の告発のように当該犯罪の訴追を求める意思表示を必要としない」ので、
 労働者はこっそり申告して、監督官はたまたま臨検に来たような顔をして「是正勧告!」ということが多いのです
「が、」しかし
「犯罪の訴追を求める意思をもってなされた申告は、右の告訴又は告発であるから、この場合、労働基準監督官は、司法警察職員として刑事訴訟法第241条以下の(送検)手続きにより処理しなければならない」ことになります。
 こういう・・・・「怨みに満ちた意思の申告」をする人やそれを煽る人は、今後、確実に増えていくことでしょう。

4.何故、昇給があるのか?

 話は戻って、とにかく賃金は公正でなくてはいけません。

 では昇給とは何でしょうか。
 それは賃金カーブ全体を上げるベースアップと個人が賃金カーブというエスカレーターに乗るように上がる定昇が組み合わさったものです。

 賃金表がない会社でも、現に20歳前後の新卒の賃金と40歳代課長の賃金は違うので、賃金カーブは存在するというのが私の見解です。

 人事評価を処遇に反映させている会社では、エスカレーターの右側を歩いて早く登る人がいます。逆走する人もいます。それははなはだ迷惑なことです。
 早く登るのも迷惑だからと「歩いてはいけません!」というヌルイ風土の組織やみんな平等に上層階に登ってしまう組織もあります。
 しかし、年齢給のように、若年者の定着や人材育成などを目的に生計費の伸長カーブに政策的に配慮した賃金(それは、いわば生活能力主義)は別として、本人の能力・実力や職務価値の証(あかし)たる本給は、本来、何故上がるのでしょうか?

 賃金カーブ維持の断固貫徹闘争勝利を運動方針とするような日本の労働組合が、同一労働・同一賃金という原則を唱え続けていることは、端から見るとたいへん不思議もののように見えます。

 人は、右を向いて左を向いて、他人との差を感じ「格差だ」「不公平だ」と嫉妬や怨みをもち、あるいはシガミツイタリすることは、得意とするところですが、井戸に落ちたサソリのように、胸にじっと手(ハサミか?)をあてて・・・・

「嗚呼・・・私は、去年の私と較べてどうであるだろう」
「来年・・・私は、この社会にどう貢献しているだろう」
などと真面目に考えることは、不得手な存在です。

 職業人としてのBが、昨年のBと同じであれば、または来年、再来年の今月今夜のBと同じであれば・・・・

 同一労働・同一賃金。

(阿世賀 陽一)