管理職の責任とリスク

1.管理職の責任

 部下に対する直接の指揮命令者である管理職には、時間外・休日労働などの労務リスクについて、大きな責任があります。

 一般的に非時間管理者(端的に言って残業がつかない人)と呼ばれる管理職本人には、「残業の届出」とかのめんどうな時間管理から解放されているという一面があります。その感覚で部下に対しても
「私に求められているものは、ただ一つ。わが部門の成果である!(残業代、オレが払うのでないし・・・・)」とか
「使用者責任って、社長のことだろ」とか考える人がいたら、その人は管理職失格です。

 労働基準法で使用者とは、会社そのものや経営者だけではなく、労働者に関して「会社のために行為をする全ての者」とされています。
 少なくとも管理職には、使用者としての責任があります。

 そして、そのような管理職の重大な職責もさることながら、経営にとっては、管理職本人にも二重のリスクがあります。

2.リスクT−「管理監督者」の否認

 一昨年の平成20年には、新聞やテレビで「名ばかり管理職」が話題に登り、「多店舗展開する小売業、飲食業等の店舗における管理監督者の範囲の適正化について」という、「銀行」におけるトラブル多発以来、31年ぶりの行政通達もでました。

 「管理職には残業がつかない」という法的根拠は、労働基準法で「労働時間、休憩及び休日に関する規定」は「管理監督者」には「適用しない」とされていることにあります。しかし、(社内から)出るところに出れば、たとえ「名ばかり」ではなく「花も実もある管理職」であったとしても、労働基準法において時間外・休日労働等の適用除外とされる「管理監督者」のハードルは高いのです。

@「管理職手当」など、それにふさわしい待遇を受けていること。
 それは・・・・(経験上)どこの会社でも、それなりの待遇はなされていると思います・・・・

A経営者と一体の立場にあり、事業主(会社)に代わって、労務管理を行う地位にあること。
 この「経営者と一体」について、裁判例では「事業主の経営に関する決定に参画し」としているものがあり、それに「該当していないじゃないか」と主張されることがあります。

B労働者の労働時間の決定を行い、それに従った労働者の作業を監督していること。

・・・・それらの権限の「当然の帰結」として、

C自らの労働時間は自らの裁量で律することができること。
 それは
「オレ疲れたから明日、頼むよ♪」と休んでも、
部門内の仕事が滞りなく回り、成果をあげる組織を、自らが創りあげて維持し、部下の信任を得ているということです。
 それほど・・・・自律した管理職が、ホイホイいるものでしょうか?
(そうあってもらわなければならないのですが)

 管理監督者を否認されると、その「役職手当」も含めて計算されるので「未払い」残業代は高額になります。
 経営者は「期待への裏切り」「割増されての二重取り」という、たいへん悔しい思いをすることになります。
 もっとも、管理職の「未払い」残業代要求は、これまで会社に与えられてきた地位や立場を自ら否認することなのですから、本人対使用者の関係としては、末期的な事態ではあります。

3.リスクU−「管理職」を管理する責務

 労務リスクを対策する立場では、平成12年の「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関する基準」という通達は、衝撃的なものでした。

 そこには、(残業「未払い」や過重労働がないように)タイムカード等で使用者は労働者の始業・終業時刻など「労働時間を適正に把握するなど適切に管理する責務がある」だけではなく、
 管理監督者やみなし労働適用者についても(健康確保のために)「適正な労働時間管理を行う責務がある」とされているのです。

 労働者全般には「適正に把握する〜適切な管理」で、
 管理監督者等には「適正な管理」です。

 管理職は、厳密には非時間管理者ではありません。
 全くの「ノー管理」では、問題が起きたとき、たいへん不利なことになります。

 実際に、「うつ」や脳・心臓疾患による死亡・障害事件というのは、管理職のような責任のある人に多いのです。
(「責任」自体が動機付け要因=「やる気」の元であり、同時に「ストレス」の原因でもありますからね)

 管理職が、労働基準法が認める真性の管理監督者であるならば、その趣旨からは当然に自己管理していなければなりません。

 そのような管理職の「自己管理」を、会社はさらに「管理」しなければならないのです。

(阿世賀 陽一)