セクハラとパワハラ

1.人が嫌がることをすること

 「ハラスメント」は「イジメ」や「嫌がらせ」の意味に使われています。
 子供の頃、母だったか祖母だったかが
「弱い者イジメをするのは、その人が弱い証拠なんだよ」
と話していたのを思い出します。子供の頭では
「弱い者イジメする者は、相対的に弱い者よりは強いのではないか」
と思いましたが、そうではありませんでした。
 弱い者イジメする者は、絶対的に弱いのです。
 それが発生するということは、弱い者同士、組織を弱体化させているということです。
 
 新聞やテレビで、「イジメが・・・まさかウチの学校で」と絶句し、司会者やコメンテーターや「世間」の総攻撃に晒される校長先生等の姿は対岸の火事とはいえません。 
 平成20年度の個別労働紛争にかかる相談は197,904件、内訳は解雇が25%、労働条件引き下げが13.1%、「イジメ・嫌がらせ」が12%と3本指に数えられます。 
 そのなかでも「イジメ・嫌がらせ」は、平成14年の5.8%から倍増しています。
 
 故意に人を嫌がらせ、人に嫌われる、性格の悪い人でありたいと望む人は、そう多くはいないと思います。たまにいたとしても、因果応報、あまり良いことにはならないでしょう。
 しかし「嫌がらせ」とは、相手が「嫌がる」ことをすることなので、自分の頭の中の「思い」とは別のことです。
 特にセクシュアル・ハラスメントとパワーハラスメントは、損害賠償や慰謝料の対象になるなど、会社の大きなリスクになります。悩ましいメンタルヘルス不調など業務上災害の原因になります。もともと不調であった人についても「増悪させた」とされる可能性があります。
 メンタルとハラスメントは「合わせ技一本」の危険。

2.セクハラ問題への対策

 1997年に男女雇用機会均等法が改正されたとき、その第21条で「職場における性的な言動に起因する問題に関する雇用管理上の配慮」を事業主は「しなければならない」義務とされました。   
その時から、セクハラは被害者と加害者との問題だけではなく、それ以上に、事業主の非違行為であり、責任を問われ損害賠償や慰謝料の請求対象になりました。
 セクハラには「対価型(性的な言動に対する労働者の対応によっては、その労働条件についての利益・不利益がちらつくもの・・・・それはイヤらしい)」と「環境型(性的言動により労働者の就業環境が害されるもの)」があります。
注意しなければならないのは、むしろ「環境型」の(後に加害者とされる本人にとっては)まさかの、何気ない、ウケねらいの、親密さの表現の、冗談のつもりの、害意のないつもりの「言葉」です。
 経営者・管理責任者は、次のように、やるべきことをやっておくことが最もリスクを軽減することにつながります。
@就業規則などに「セクハラをしてはいけない」「するとこうなる」と規定し、かつ「こう話したり行動したりするとセクハラになるから注意しよう」と知らしめておくこと
A相談・苦情に対応する担当責任者をあらかじめ定めておくこと
Bセクシュアル・ハラスメントが起きてしまったら、迅速に事実関係を確認し、就業規則に基づいて措置すること(それらの際、その労働者等のプライバシーの保護、労働者本人が不利益な取扱いを受けないよう、特に留意しなければなりません)

3.パワハラ問題への対策

 パワーハラスメントは、中央労働災害防止協会によれば「職場において、職権などの力関係を利用して、相手の人格や尊厳を侵害する言動を繰り返し行い、精神的な苦痛を与えることにより、その人の働く環境を悪化させたり、あるいは雇用不安を与えること」とされています。
 平成21年4月には労災認定にかかる「職場における心理的負荷表」に心理的負荷の強度Vとして「ひどい嫌がらせ、いじめ、又は暴行を受けた」が追加されるなど、今後も業務上災害として認定されるリスクは拡大していくことでしょう。   
 その対策について政府からの指針は今のところ出ていません。
 難しい問題だからでしょう。
 それは雇用契約である以上は、部下に対して上司が強い「職権(指揮命令権)」をもつことは当然であり、部下のミスや不成績を叱ることは上司の「職責」でもあるからです。 
 パワハラとは、そのような指揮命令権の濫用と捉えられます。
 濫用とは
(1)動機
(2)目的
(3)手段、
 そして(4)程度の面で、不純なものや逸脱行為があることです。

 事業主のために行為する全ての者(使用者)には、たとえ厳しくとも
(1)顧客のために
(2)(自己保身的ではなく)会社のために
(2)部下の育成のために
 「正当な指揮命令」であることを説明できることを前提に、職責を全うすることが必要です。

  つまりは・・・・愛をもって叱るのです。

(阿世賀 陽一)