チョコパイ成果主義

1.人民から石

 2011年もそろそろ終わりという12月下旬、ネットを開けるとポータルサイトに「地面を叩きながら泣いて悲しむ人々の写真」とともに、「朝鮮民主主義人民共和国」の金正日氏が亡くなったというニュースが載っていました。
 そのこと自体は、(後で、夕刊紙で読んだ)その日の就任記者会見で、報道陣からその訃報についてのコメントを求められた橋下徹大阪新市長が「市長が言うことじゃないでしょう」と話されたように(そうか、マスコミの「そのココロ」は「独裁者」か)、なんとも、言及すべきことではありません。
 が、関連ニュースで、生前親交のあった韓国の現代グループ創業者鄭周永名誉会長の話し として、金正日氏が
「自分はどこに行っても住民が大歓迎してくれるが、本当は私のことを好きではないことはわかっている。眠れば石を投げつけられる夢を見る」
と告白していたという記事は、あまりにも悲しい。

2.チョコパイ騒動

 朝、出勤前にテレビを見ていると、新聞各紙の記事紹介コーナーで、朝日新聞の「北朝鮮チョコパイ騒動」というコラムが紹介されていました。朝日は取っていないので駅で買い、さらにネットを検索すると、その概要は次のとおりです。

●最近、韓国企業が操業する北朝鮮の経済特区で「チョコパイ騒動」が相次ぎ、入居している123社の経営者たちを悩ませている。
●その開城工業団地では、北朝鮮労働者約4万8千人が働いている。
●ある企業が、韓国で広く食されているチョコパイを午後の「おやつ」として1人につき1個配っていた。
(日本の「森永エンゼルパイ」のようなものでしょう。アレを初めて食べたときは、とても美味しかったという記憶があります。そして、北朝鮮労働者の口にも、ソレはあまりにも美味しかったことでしょう。)
●包装紙のゴミが出ないことから考えると、子供に与えようと食べずに持ち帰っているようである。
(微笑ましい話です。子供の頃(高度成長の初期)、父親が結婚式等で出た「折り詰め」を、全く手を付けずに家に持ち帰って、家族全員で食べたことを思い出します。それは幸福な貧しさでした。)
●そこで、本人用と家族へのお土産用に2個ずつ配るようになった。
(嗚呼、福利厚生、配慮、心配りというものです。)
●そのように、初期に一部の企業がたまたま配ったチョコパイは、しだいに工業団地の公式的な間食となり、仕事の能率向上に大きく役立った(工業団地企業協議会副会長の話し)。
●チョコパイの価格は、1個300ウォン(約20円)。
労働者の賃金は、月平均105j(約8,000円)。
(「そんなに安い物で、それほど労働者が喜ぶなら」と思ったのでしょう・・・)
●やがて、ノルマ達成の「成果給」として10個支給する企業が現れた。
(ありそうなことですが、それは根本的な変質です。企業が配るチョコパイとは何であるのか?「福利厚生である!」と断言していれば良かったものを・・・・)
●工業団地の総配給数は、日量20万個。持ち帰ったチョコパイの味は、労働者の友人・知人等、他の住民に拡大・波及していった。
●チョコパイの闇市場成立。
(1個につき一般労働者の平均月例賃金の6分の1で売れるそうです。10個なら月例賃金よりも高額になります。)
●北朝鮮労働者は、各企業のチョコパイ支給数を情報交換。さらにチョコパイで儲けるための「講」も成立。
(もう子供には食わせないでしょう。それにしても、誰が買って食べているのか。)
●支給数が少ないと生産性が低下するようになった。
(安直・安易なチョコパイ成果主義の、それが結果というものです。)
●そして、労働者代表は「チョコパイではなく現金をくれ!」と要求をはじめた。
(もちろん、「1個20円」の方の価額ではないでしょう。)

3.強欲ハゲタカ成果主義

 まるで、60〜70年代にアメリカで研究された経営学や労働心理学の実験結果のような話です。
 生きている人間は、良くも悪くも欲を持つものです。その欲は変化するものであり、しかもそれは、後戻りしにくい変化です。報酬と満足とやる気の関係は、そう単純なものではありません。さらに「最も効率よく儲かることが正しい」というものでもありません。
「限りないもの〜それは、欲望〜(井上陽水)」

 そのような・・・・かつて輝かしかったアメリカの・・・・そのアメリカのCEOが受け取る報酬は、1970年には、同国労働者の平均報酬の44倍でした。
 それは2000年に300倍を超え、昨年公表された2010年の調査では343倍です。

 格差の下の方の(99%と主張している)市民を、アメリカ合衆国は、これからどうやって

 満足させていくのか。

(阿世賀 陽一)