パワハラ2

1.パワハラ問題の拡大

 今や、セクハラ問題よりもはるかに増殖した労務問題は、「職場のいじめ・嫌がらせ」、通称パワーハラスメント(以下、「パワハラ」)のリスクです。
 全国の労働局等への個別労働相談の件数でも、平成22年度は、解雇に次ぐ2位、県によっては1位のところもあります。

 グローバルに厳しい世の中なので、昔なら寛容な態度で済ませられるものが、「そうはいかなくなっている」ということは考えられます。
 また、最近の若い人の中には、上司や先輩社員に何か言われると、簡単に「被害者」の立場に逃げ込もうとする人がいます。
 本人だけではなく、そのような事態に(学校じゃあるまいし・・・・学校でも良いことではありません)モンスターペアレント(親)などが絡んできて「謝罪しろ!」「娘(息子)の上司をクビにしろ!」とくると、たまりません。
 (そういう親は、自分が何をしているのかわからないのです。)
 それに
「なによりも被害者の救済が必要です!」
「もっと、ゆとりある仕事をさせろ!」(業務効率や生産性の向上という意味ではありません。)
「加害者の不法行為、会社の使用者責任・債務不履行責任、そして損害賠償責任を追求しましょう!」という論調が加わります。

2.パワハラとは何か!

 そのパワハラの背景をもっぱら上司などの「職権」と捉える風潮に対して、
☆雇用契約である以上は、部下に対して上司が強い「職権(指揮命令権)」をもつことは当然のことである。
 そうでなければ、組織は成り立ちません。
☆むしろ積極的に、正当なる指揮命令・指導であるとアカンタビリティーできる姿勢で、職責を全うすべきである。
 そのように私はアドバイスしてきました。

 この度(1月30日)、政府・厚生労働省の「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」の「ワーキング・グループ」から、「会議」への「報告」が公表されました。「会議」は、この報告を基にさらに議論し、本年の3月を目処に予防・解決に向けた提言をとりまとめるとしています。
 「報告」は、パワハラを次のように定義しています。
「職場のパワーハラスメントとは、同じ職場で働く者に対して、職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・身体的苦痛を与える又は職場環境を悪化させる行為をいう。」
 これまでの厚生労働省関係団体等の定義に比べて、かなりな進展です。

 「職場内の優位性を背景に」としたところは、職権や職務上の地位に限らず、先輩と後輩、職能の有無、正社員と非正規社員など広く捉えるべきであること。そして非公式リーダーを中心に「みんな」で上司の人格や尊厳を侵害しているケースも、逆パワハラなどではなく、真正にパワハラであるということです。
 「業務の適正な範囲を超えて」とは、逆に言えば
「個人の受け取り方によっては、業務上必要な指示や注意・指導を不満に感じたりする場合でも、これらが業務上の適正な範囲で行われている場合には、パワーハラスメントには当たらないものとなる(「報告」本文より)」と言うことです。
 あたりまえのようですが、これは昨今の風潮や、「業務上の必要性」が絡まないセクハラ問題とは、明らかに違うところです。

3.パワハラの6パターン

 「報告」は、業務がその適正な範囲を超えることがないよう、パワハラを6つの類型に整理しています。

@暴行・傷害(身体的な攻撃)
たとえ業務の遂行に関係することであっても、この「手段」は(大相撲の「可愛がり」のように)ダメでしょう。

A脅迫・名誉毀損・侮辱・ひどい暴言(精神的な攻撃)

B隔離・仲間外し・無視(人間関係からの切り離し)
これらには、業務の遂行には関係のない不純な「動機と目的」が想定されます。
まずもって「愛」がありません。

C業務上明らかに不要なことや遂行不可能なことの強制、仕事の妨害(過大な要求)

D業務上の合理性なく、能力や経験とかけ離れた程度の低い仕事を命じることや仕事を与えないこと(過小な要求)

E私的なことに過度に立ち入ること(個の侵害)

 このあたりは、各企業のさまざまな事情による「程度」の問題として、適正な指導との線引きが難しいとされているところです。
 私的なことには、安全(健康)配慮義務も含まれるでしょうから、就業規則への規定化が必須になります。
 昔流行った「リストラ部屋」は、あきらかにマズイです。

 「遂行不可能なことの強制」が、今後一人歩きしていくことは考えられます。
(社長)「君の部の本年度の売上目標は、昨年対比150%でVターン!」
(部長)「はい!必ず やります!」
(部長、悲哀の後ろ姿で退室・・・・)
(A )「社長、彼、そんなに売ると思います?」
(社長)「いえ。全く思いませんが、150%!とハッパをかけておけば、110%くらいは、売るんじゃな
いかと思って・・・・」

 社内で、部下に対し「足して2で割る」交渉のような、数字だけの吹っ掛けはやめましょう。部長の頭の中は、無用なストレス、または、もう今から期末に向けて「売れなかった言い訳」でいっぱいになっているかもしれません。
 目標を達成するためには、それ以上の努力が必要です。しかし、どうせ部下の頭の中をいっぱいにするなら、その努力の中身(実現可能な達成方法と過程)を考え抜かせて、計画させて、引き出して、確認すべきです。
 達成すべき目標には、根拠と確信が必要です。
 そして、小学2年生と4年生を競争させても、何の意味もありません。
 2年生は、2年生同士(同一レベル等級内)で競わせ(期待し、評価し)、切磋琢磨させてこそ、全体のレベルをあげることになります。
 そのようにしていけば、そこに「遂行不可能なこと」という主張が入り込む余地はありません。

 正当な指揮命令や指導のためには、「愛」が必要です。社内においての「愛」とは、「期待」をかけるということです。
 それは、甘くしろとか、緩くしろとかでは、決してありません。

(阿世賀 陽一)