高年齢者雇用の新段階

1.改正高年齢者雇用安定法の成立

  内閣総理大臣の問責決議案が可決された平成24年8月29日のその日に、「高年齢者が少なくとも年金受給開始年齢までは意欲と能力に応じて働き続けられる環境の整備を目的」とする、高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(以下、高年齢者雇用安定法)の改正法案も参議院本会議で可決、成立しました。

改正内容は
(1)60歳以降に継続雇用する対象者を労使協定により限定できる仕組みの廃止
(2)継続雇用先とする職場をグループ企業まで拡大
(3)高年齢者雇用確保義務に関する勧告に従わない企業名の公表規定を新設
(4)高年齢者雇用確保措置の実施および運用に関する指針の策定
の4つで、施行日は平成25年4月1日です。

2.背景、60〜65歳年金の段階的廃止

 この改正の背景には、日本社会の高齢化により、男性の60歳から65歳までの「特別支給老齢厚生年金」の、これまでの「定額部分(1階部分)」の支給開始年齢の段階的な引き上げ・廃止に続いて、「報酬比例部分(2階部分)」の引き上げが開始されることがあります。
 平成25年4月1日から平成27年3月31日までの間に満60歳となる男性は、原則として満61歳に達した月以降から報酬比例部分の支給が始まるため、60歳から61歳までの1年間は無年金となります。以降、支給開始年齢が段階的に引き上げられ、平成33年4月1日以降に満60歳となる男性は、原則として65歳から公的老齢年金の支給のみになります。
 女性の段階的引き上げは男性の5年後から始まるので、平成30年4月1日に60歳に達する前の方まで報酬比例部分の支給開始年齢は60歳のままですが、男女雇用機会均等法が、定年や労働契約の更新について性別を理由とする差別的取扱いを禁じているため、高年齢者雇用安定法では男性と同様に扱われます。

3.労使協定による限定の廃止について

 労使協定により継続雇用を限定できる仕組みの廃止には、12年間の経過措置があり、その期間中は、再雇用契約更新時に継続雇用している人が一定の年齢(=男性が特別支給の老齢厚生年金の報酬比例部分を受給できる年齢)に達した後、次のように、これまでどおり労使協定による基準が限定的に適用できます。
 仮に、満60歳に達した月の月末に定年退職し、その翌月から1年ごとの再雇用契約を、満65歳に達する月の月末まで続けるとすると、
●平成25年4月1日から平成27年3月31日に満60歳に達した従業員は、満61歳に達した翌月の契約更新(=最初の契約更新)以降は、基準を適用できることになります。
以降、従業員が満60歳に達するのが
●平成27年4月1日から平成29年3月31日の場合は、満62歳に達した翌月の契約更新(=2回目の契約更新)から、
●平成29年4月1日から平成31年3月31日の場合は、満63歳に達した翌月の契約更新(=3回目の契約更新)から、
●平成31年4月1日から平成33年3月31日の場合は、満64歳に達した翌月の契約更新(=4回目、最後の契約更新)のみ基準が適用できます。
●そして、平成33年4月1日以降に満60歳に達する従業員(誕生日が昭和36年4月2日以降)には、労使協定の基準を適用することができなくなります。
 なお、すでに効力を有している労使協定に自動更新の特約があり、かつ本改正の施行後も継続して制度を運用し続ける場合は、あらためて労使協定を締結しなおす必要はありません。

 しかし、継続雇用者を限定するために、このような複雑な管理は、実際に有効でしょうか?

4.指針は11月に出ますが・・・・

 高年齢者雇用確保措置の実施および運用に関する指針の中には、本措置の実施・運用に関する事項の一つとして、心身の故障のため業務の遂行に堪えない者等の継続雇用制度における取扱いが示され、健康状態や勤務態度が著しく悪い者に対しては、一定の基準をもって、継続雇用の対象から外せるようになる予定です。この基準の詳細は、厚生労働省から11月中旬に発表されます。これにより来年4月以降は、傷病のため労務不能である者や解雇事由に該当するような者は、これまでのように労使協定によって基準を設けなくても、継続雇用の対象から外せることになる・・・・ということです・・・・。

 労務不能や解雇事由に該当する人は「継続雇用しなくても、差しつかえない」というのは、「あたりまえ」と言うべきか、「順序が逆」と言うべきか・・・・。

 しかし、真面目に定年まで働いてきた人を無年金の中に放り出すことは、解雇事由相当は別として、実際には雇用する立場としても難しいことと思われます。

 これからの高年齢者雇用は、限定や排除ではなく、雇用を維持しながら、その労働能力や役割、そして成果に応じた人事賃金などの処遇制度を整えていくことが正道です。

(阿世賀 陽一)