高年齢者雇用の新段階2

1.継続雇用しないことができる基準

 平成25年4月1日以降に60歳になる男性は、60歳台前半の特別支給老齢厚生年金の支給開始年齢が61歳になります(平成27年4月1日以降に60歳になる男性は62歳から。そうして、平成37年には65歳からの老齢厚生年金のみになります)。
 それに伴って、60歳から65歳まで継続雇用する対象者を労使協定によって限定できる仕組みが原則廃止される「改正高年齢者雇用安定法」が4月1日に施行されます(この労使協定は3月31日までに締結しているならば、経過措置として最大で平成37年3月31日まで効力は残ります)。

 以前、平成24年11月になれば、これまでのように労使協定によって基準を設けなくても、継続雇用の対象から外せる「一定の基準」が、この法律に委任され、効力のある「高年齢者雇用確保措置の実施及び運用に関する指針」として出る予定、とお話ししましたが、出ました。
 それは・・・・
「心身の故障のため業務に堪えられないと認められること」
「勤務状況が著しく不良で引き続き従業員としての職責を果たし得ないこと」等
「就業規則に定める解雇事由又は退職事由に該当する場合には、継続雇用しないことができる

 ・・・・確かに「一定」ではあります(このような曖昧言葉を社内で使用してはいけません)。

 通常は、解雇事由に該当する者がいたなら、労働契約上または社内秩序維持のために、継続雇用しないことが「できる」という判断以前に、会社としては、解雇「しなければならない」でしょう。

 「就業規則に定める解雇事由又は退職事由と同一の事由を、継続雇用しないことができる事由として、解雇や退職の規定とは別に、就業規則に定めることもできる
「また、当該同一の事由について、継続雇用制度の円滑な実施のため、労使が協定を締結することができる
 「なお、解雇事由又は退職事由とは異なる運営基準を設けることは『法律』の趣旨を没却するおそれがあることに留意する」(没却:なくする、無視する−広辞苑)

 そして「継続雇用しないことは、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であることが求められると考えられる」としています。
 ちなみに労働契約法は、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」と規定しています。

 この法律は、国が会社に65歳までの継続雇用制度を「つくれ」というもので、国が個々の労働者の65歳までの身分を直接保障するものではありません。
 しかし「しないことができる」とは、「しなかったら会社の責任」であり、かつ「継続雇用しないこと」は、「きっと、解雇事件のようなトラブルになりますよ」「法律を無視してトラブルになれば当然に不利なことになりますよ」という意味でありましょう。

 一方、解雇事由又は退職事由と「同一の事由」で、継続雇用しないことができる事由を定めることは、無意味なことではないと思われます。
 例えば、

○事業の縮小、閉鎖等その他会社業務の都合により剰員を生じ、他に適当な配置箇所がないとき

という条文を整理解雇に適用するのと、定年退職後の継続雇用をしないことに適用するのとでは、「同一の事由」であっても「同一の効果」であるとは考えられません。
 また締結することができる「労使協定」は、労働者側の当事者が労働組合であれば、書面に作成し、労使が署名または記名押印することによって労働組合法上の労働協約となり、強力な規範力となります。そうではない労働者代表との労使協定であったとしても、それで円滑に実施され定着したならば、確かに「円滑な実施」に、より効果があるものと考えられます。
 そのため「定めることができる」「締結することができる」と言うなら「しておいた方」が、リスク回避につながるものと解されます。このあたりは、○○○文学というよりは、通達の紙背に、甚深微妙なものがあるように感じます。
 ただし、それをするときは、就業規則の元の「解雇事由・退職事由」をよくよく合理的に吟味して、見直ししておくことが必要です。

2.子会社・親会社・関連会社で

 また11月には、継続雇用先の範囲をグループ会社(特殊関係事業主)にまで「拡大」という法改正について、これを定義した改正施行規則(省令)が出ています。
 特殊関係事業主(凄い言い方・・・・)とは
@子会社A親会社B親会社の別の子会社C関連会社D親会社の関連会社です。

 親子関係とは、

(1)株主総会などの議決権が過半数である場合
(2)議決権が40%以上50%未満であれば

「出資・人事・資金・技術・取引等により緊密な関係により同一内容の議決権行使が認められる者」「同一内容の議決権行使に同意している者」を含めて過半数である場合
または
「取締役会などの過半数を占める」「事業方針の決定を支配する契約等がある」「資金調達総額の過半を融資」「その他意思決定の支配が推測される」のいずれかである場合
(3) 議決権が40%未満でも
を含めて過半数で、かつBの要件を満たす場合です。

 関連会社とは、

(1)議決権が20%以上である場合
(2)議決権が15%以上20%未満であれば

「親会社の役員などが社長などに就任」「重要な融資・技術の提供・営業上または事業上の取引」「その他事業等の方針決定に重要な影響を与えることが推測される」のいずれかである場合
(3) 議決権が15%未満でも
を含めて20%以上で、かつCの要件を満たす場合です。

 この特例を「利用」する場合、事業主は、その特殊関係事業主との間で、高年齢者をその特殊関係事業主が引き続いて雇用することを約する契約を締結する必要があります。

 このように親子関係・関連会社関係を詳細に定義して、さらに「推測」するのは行政でありましょうから、この特例は「あなたの親戚に・・・・ゆとりのある人が、いるでしょう」的な指導に使われるものと思われます。「利用」と言うよりも、高年齢者雇用は、事実上はグループでの責務であると言うことです。  

 高年齢者雇用確保措置の未実施については、指導・勧告を受け、勧告に従わなかったときは、ハローワークで求人ができなくなり、雇用助成金が受けられないという制裁の他に、この法律に則って企業名を公表されます。これは、労働基準法のような送検されての懲役・罰金のような制裁ではありませんが、今の時代、公表などされるとネットで拡がり、たちまちにブラック企業とされるリスクがあります。

3.合意による継続雇用

 65歳までの継続雇用制度とは、希望者全員を対象とする制度ですが、この「希望」とは、定年退職者の希望する労働条件での雇用を義務づけるものではありません。
 会社が合理的な(経営)裁量範囲の条件を提示していれば、定年退職者がこの条件に合意せず、拒否したとしても、この『法律』違反にはなりません。

 会社は、今後、指針にあるように「年齢的要素から、能力・職務等の要素を重視」し、かつ「高年齢者の雇用及び生活の安定にも配慮」した「賃金・人事処遇制度の見直し」をしていく必要があります。

 そして、定年退職者の「働く意思」を聴くことはもとより、根本的に「高年齢者にどのような働きをしてもらうか」をよくよく考えたうえで、よく話し合いをしなければなりません。

(阿世賀 陽一)