有期労働契約の問題

 平成25年の人事・労務の課題は、高年齢者と有期契約労働者への対応でありましょう。

1.有期契約労働者の雇止めが無効になる場合

  有期労働契約の契約期間満了時において、更新拒否することに「客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当であると認められる」ことがない限り、期間満了退職が認められず、労働者の更新申し込みを使用者が受諾したとみなされるという事由には

@続けて働くことが当然のような反復更新によって、その契約を「更新拒否」することが一般
労働者を「解雇」するのと社会通念上「同じもの」であると認められること/の他に

A契約社員やパート社員などに、その契約が「更新されるもの」と「期待させる」こと/があります。

 そのような期待をもたせるものがあったか否かは、訴訟などのトラブルになれば、最初に労働契約が締結された時から雇止めするとされた契約満了時までの間のあらゆる事情が総合的に勘案されますので、いったん労働者が「雇用継続への合理的な期待」を抱くにいたったにもかかわらず、満了前になって(人事担当者などが)会社が更新年数や更新回数の上限などを一方的に通告したとしても、それで直ちに有期契約労働者の合理的な期待が否定されることにはならないとされています。
 有期労働契約に雇用の柔軟性を求めるならば、普段の言動が大切です。
 しかし、それを経営者や人事担当者がわかっていても、たいていは、すでに現場の直接上司が理解しない言動を繰り返していて会社を不利にしているものです。
 管理職研修などの実施が必要です。

 そもそも、労働者からの更新の申込みを使用者が「承諾したとみなされる」には、まずその「申込み」が必要になりますが、それは使用者から
「悪いが今度の契約満了日で終わりにさせてもらうよ」
という雇止めの意思表示に対して労働者が
「それは困ります」
という口頭での反対の意思表示であっても有効とされます。

 有期労働契約の契約期間の満了後であっても、遅滞なく申込みをしたものであれば有効とされます。また「申込みの遅れ」に正当・合理的な理由があれば、有効とされる場合があります。 

 雇止めが無効で、更新したとみなされる状態で、それでも使用者がヤメてもらおうとすれば、解雇ということになります。
 その解雇もまた「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」は、権利を濫用したものとして無効とされます。

 解雇が無効になって、その間、使用者が就労拒否していたとしたら、労働基準法第26条による平均賃金の60%以上の休業手当ではなく、民法536条第2項を根拠にしたバックペイ(賃金の全額払い)を請求されることになります。
 それで引くに引けなくてなって、ヤメてもらおうとすれば、解決・和解金は高額なものとなるでしょう。

2.無期労働契約への転換

  改正労働契約法の「有期労働契約が5年を超えると期間の定めのない労働契約に転換」は、平成25年4月1日から施行されます。

 本人が会社に無期労働契約の申込をできる(=使用者は承諾したものとみなされる)無期転換申込権は、その契約期間中に通算契約期間が「5年を超えることとなる契約」の初日から満了する日までの間に行使できるので、例えば1年契約の場合は6回目の契約の初日からですが、3年契約の2回目のように、その途中で5年になるような契約は、その2回目の初日、すなわち4年目からということになります。
 この申込権が生じている契約期間に本人が申込権を行使しなかった場合でも、再度有期労働契約が更新された場合は、その時に新たに無期転換申込権が発生します。
 5年になる直前に無理にヤメてもらおうとすると、有期契約期間中の解雇は、「やむを得ない事由」によるものでなければならず、正社員の解雇よりもむしろハードルは高いものとなります。

「本契約は、無期契約に転換しないものと相互に合意するものとする」
というように、あらかじめ、無期転換申込権を有しない、または放棄することを新規契約や更新の条件する有期労働契約を締結したとしても、そのような当事者の意思表示は無効と解されます。
 この5年の通算契約期間は、事業場単位ではなく、同一の使用者(法人であれば法人単位)ごとに計算されるので、転勤させてもリセットされません。

 派遣労働者の場合は、労働契約の締結の主体である派遣元事業主との有期労働契約について契約期間は、通算されます。

 この無期転換申込権が発生しないようにするために会社が、就業実態がそれまでと変わらないにもかかわらず、派遣形態や請負形態を偽装し、労働契約の当事者を形式的に他の事業主に切り替えた場合も、同一の使用者との労働契約が継続しているものとみなされます。

3.クーリング期間の問題

 改正労働契約法では、契約期間の間に、契約がない原則6カ月の空白期間があれば、それはクーリング期間となってリセットされ(5年の)有期契約期間は通算されませんが、6カ月未満であれば通算されます。
 前の契約期間が1年未満の場合は、その期間の2分の1を基礎としたクーリング期間となります。月数の端数は通算されるので、例えば前の契約期間が4カ月超〜6カ月以下の場合、クーリング期間は3カ月です。
この前の契約期間は、連続して更新されていた場合は通算されるので、複数の契約期間が連続して10カ月を超えていた場合は、その後のクーリング期間は、やはり切り上げて6カ月です。
 契約期間の間の空白期間が、前の契約期間の2分の1のクーリング期間に満たない場合は、連続したものとみなされ、前と後の契約期間を通算した期間の2分の1以上が、その次のクーリング期間となります。
 こうして、細かく契約し細かく空白をおいたとしても、契約を繰り返す度に6カ月に近づいていきます。

 なかなか・・・・隙のない改正法ですが、法律は有期契約を無期契約に転換することを求めているのであって、そのまま「正社員にしろ」とは言っていません。

4.労働条件の書面明示義務の改正
 
 労働基準法施行規則第5条が改正され、平成25年4月1日から「期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準」も書面の交付によって明示しなければならない事項となります。
 それは有期労働契約を締結する労働者が、契約期間満了後の自らの雇用継続の可能性について一定程度予見することが可能となるものであることを要します。
「これが最後かな?」とある程度予見していたならば、それは何よりも、有期契約労働者本人の納得性とトラブルの防止に繋がることです。

(例)「更新の有無」として
   a.自動更新する(これに○をつけてはいけません)
   b.更新する場合がある
   c.契約の更新はしない

「契約更新の判断基準」として
   a.契約期間満了時の業務量により判断する
   b.労働者の勤務成績、態度により判断する
   c.労働者の能力により判断する
   d.会社の経営状況により判断する
   e.従事している業務の進捗状況により判断する

5.不合理な労働条件の禁止

 平成25年4月1日に、昨年改正された労働契約法の第20条「期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止」が施行されます。
 これは、契約社員など有期労働契約を締結している労働者(有期契約労働者)の労働契約の内容である労働条件が、「期間の定めがあること」を理由として、同一の使用者と正社員など期間の定めのない労働契約を締結している労働者(無期契約労働者)の労働条件と相違する場合、その労働条件の相違は「不合理と認められるものであってはならない」と規定しているものです。

 この「労働条件」には、賃金や労働時間などの主要な労働条件のみならず、労働契約の内容となっている災害補償、服務規律、教育訓練、付随義務、福利厚生など、労働者に対する一切の待遇を含むものです。特に通勤手当、食堂の利用、安全管理などについて労働条件を相違させることは、特段の理由がない限り合理的とは認められないので注意が必要です。

 この「同一の使用者」とは、事業場単位ではなく、労働契約締結の法律上の主体が法人であれば法人単位で、個人事業主であればその個人事業主単位で判断されます。

 この有期労働契約の不合理な労働条件の禁止には、労働基準法のような罰則付の強制力はありませんが民事的な効力があります。
 民事訴訟のようなトラブルになれば、この規定によって不合理とされた労働条件の定めは無効となり、その無効とされた労働条件については、基本的には、無期契約労働者と同じ労働条件が認められ、さらに故意・過失による権利侵害、すなわち不法行為として損害賠償が認められるリスクがあります。

さて、不合理な労働条件と判断されるポイントは、次の3つです。

(1) 職務の内容
これは、労働者の業務の内容及びその業務に伴う責任の程度をいいます。

(2)その職務の内容及び配置の変更の範囲
これは、今後の見込みも含め、転勤、昇進といった人事異動や本人の役割の変化等の有無やその範囲を指しています。配置の変更を伴わず、そのまま職務の内容が高度化していることも含みます。

(3)その他の合理的な労使の慣行などの諸事情

 したがって、有期契約労働者と無期契約労働者との間で労働条件の相違があれば、それで直ちに不合理とするものではなく、これらの要素を考慮して「期間の定めがあることを理由とした」不合理な労働条件の相違を禁止しているのです。

 労働契約は、労働者が使用者に使用されて労働し、使用者がこれに対して賃金を支払うことについて、労働者及び使用者が合意することによって成立するものです(労働契約法第6条)。
 この改正法第20条は、有期契約労働者の賃金などの労働条件を無期契約労働者と「平等にしろ」と言っているのではなく、トラブルにならないよう「使用されて労働する」その職務の内容等の違いを「明確しろ」と言っているのです。

 また判断ポイントの3つ目「合理的な労使の慣行」とは、例えば、定年後に有期労働契約で継続雇用された労働者の労働条件が定年前の他の無期契約労働者の労働条件と相違することについて、定年の前後で「職務の内容及び配置の変更の範囲等」が変更されることが一般的であるならば、特段の事情がない限り不合理とはされないということです。

 この規定に基づき民事訴訟が提起された場合の裁判上の主張立証については、次のように有期契約労働者と使用者の双方が主張立証を尽くした結果が総体として判断されます。

(1)有期契約労働者が、その労働条件が期間の定めを理由とする不合理なものであることを基礎づける事実の主張立証を行う。

(2)使用者が、その労働者の労働条件が期間の定めを理由とする合理的なものであることを基礎づける事実の主張立証を行う。

  会社は、正社員や有期契約社員の「労働条件と表裏の関係にある職務等の合理的な違い」を、あらかじめ「主張立証」できるようにしておかなければなりません。

(阿世賀 陽一)