高年齢者雇用の仕事と処遇2

 60歳以上の高年齢者を継続雇用した際の、法律論ではなく、その仕事と処遇について、もう少し具体的にお話しします。
 これは、楠田丘先生が『日本型成果主義』で提唱され、梅本迪夫先生が『自律型役割給・実績給の構築』で展開された「役割給・実績給」の高年齢者版・中小企業版です。

1.新しい高年齢者処遇の考え方

(1) 退職した場合の60歳代前半の老齢厚生年金、または賃金が低下した場合の在職老齢年金と雇用保険雇用継続給付の受給額については、前もってシミュレーョン計算して、本人にも開示します。
 その効果については、これまでのように会社と本人にとって最も有利な「最適額」ではなく、役割と実績による賃金変動が大きくなっても、その「緩衝材」となる、そのように捉えます。 

(2) 充分な面談を実施して、本人の意思を尊重します。
 男性は、今年(女性は5年後なのでまだ従来通り)4月2日から2年間のうちに60歳の誕生日を迎える方は1年間、退職しても年金はありませんが、61歳になれば、けっこうな額を受給できる人がいます。
 高年齢者には、労働法の一般的な考え方である労働者保護・労働条件保護の観点だけではなく、本人の退職する自由や働き方を選択する自由もあってしかるべきです。

(3) 「役割の前評価+実績の後評価」という賃金決定方法は、「プロ野球の契約更改のような年俸制」と説明すると理解されやすいものです。
 ただし、時間外手当などの労働基準法は遵守しなければなりません。

2.新しい職責レベル等級

(1) 会社の実状と組織ニーズから、定年後の高年齢者のための2〜3層の新職責等級を設定します。
 一般社員の人事賃金制度が職能資格制度でない場合、(理論的に「資格」は剥奪・降格しにくいものですが)従来の等級は保存せずに、定年・再雇用を機に、最終役職、最終等級、定年前数年間の実力評価、組織ニーズを基準として、この新職責等級別の「役割給・実績給マトリックス」に移行します。 
 従来の等級を保存すると、既得権となって、後々かえって不満・不納得が生ずるものと思われます。
 また従来の等級を保存しないのであれば、一つの賃金マトリックスで下位評価が予想される者に対する下への張り出し評価(一般的な評語SABCDに加えてEFGのような)ゾーンを設定するよりも、むしろ会社が用意して期待する職務のレベルに違いがあるとしたほうが、納得性があるものと思われます。
 賃金制度変更や降格・降職によって、調整給を発生させていた場合、定年・再雇用は、それを合理的にカットする千載一遇の機会です。

(2) 各層に格付けられる職責像(3層の場合)

・職責1−上級役職の継続、またはそれと同等の職責が期待される者。
・職責2−専門職、エキスパート、または職責1のワンランク軽減、職責3に加えたプロジェクトリーダー等。
 この層は、「必ず該当者がいなければならない」というものではありません。
・職責3−定型的業務を安心して任せられ、かつベテランとして状況対応が可能な者。
 プラス、後輩に対する指導責任がある。

 本人の希望や面談での合意で、短時間勤務契約を可能とします。その場合は、労働時間量の減少が質に影響を与えて役割が低下するときを除いて、原則として時間単価はそのままで、賃金額を時間割にします。

3.役割評価による役割給決定

 役割とは、会社が与え期待する職責に本人のチャレンジを加えたものです。

(1) 上級職は、自立的な完全目標管理方式で役割そのものを評価します。

・何を(職責からくる課題−本人が記述)
・どうやって(会社を納得させる達成方法−本人が記述)
・こうする(成果目標−本人が記述)

(2) 一般職は、ハーフ目標管理方式で役割評価します。

・何を(職責からくる職務−上司が記述)
・どうやって(チャレンジ・実現方法−本人が記述)
・こうする(具体的着地イメージ−本人が記述)

 一般職に完全目標管理を導入することは、そもそも無理があり、無理をさせると、困惑しながら作文して退廃して、5年持たないと思われます。

 目標記述だけで評価して役割給を支給できるかという問題について、もし口だけのものであったなら(それを評価しなければ元々問題はないのですが)、次年度の実績評価と実績給、そして役割評価と役割給は当然に、かつ相当に下がることになります。
 そのことは、充分に説明しておきます。

4.実績評価による実績給決定

 上級職・一般職共に、目標管理方式の業績評価表を基に、滅多に発生しない「S」「D」評語をカットし、「B+」「B−」を加えた5段階で評価します。
 役割・実績が共にA評価ならば、高い目標(A)+高い達成(A)の組み合わせにより、後評価のみである60歳までの一般正社員におけるS評価と同じになり、共にC評価ならばD評価に相当することになります。

 役割・実績評価は、原則として最初と最後を除き、年度末に年俸更改として実施します。

 労働契約とは、労働者を(1)使用して(2)賃金を支払うことですから(労働契約法第6条)、労働と賃金のバランスが取れているならば、企業のリスクや継続と排除に関する法的論議の必要は減少することになります。

 

(阿世賀 陽一)