問題社員3−始末書の問題

1.懲戒規定の始末書

 会社規程集や就業規則文例集、そして実際の就業規則の懲戒規定についても、次のように書かれていることが多いものです。

(1)譴責:始末書をとり、将来を戒める。
(2)減給:始末書をとり、減給して将来を戒める。ただしその額は云々(労働基準法の範囲で)。
(以下、略)

 あまりに常識的な条文例なので、これで当然のように思われるかもしれませんが、ここには若干の法的な問題があります。
 それは、素直に始末書を書いてくれたら問題はないのですが、もし本人が始末書提出を拒否したらどうなるかということです。
「職務上の指示命令に従わない」ということで新たな懲戒の対象になるという考え方がある一方、労働契約は
「(反省を強いるなど)労働者の人格まで支配できるものではない」という有力な考え方があります。
 企業秩序を維持するための懲戒規定であるのに、それをネタに争いにされて「強要だ!」とされる可能性もあるとしたなら、秩序維持どころではありません。

 話は飛んで・・・・、店員を土下座させたクレーマーが「強要罪」で逮捕されました。
 宿敵の常務を土下座させた半沢直樹も、あそこまでしたら私怨によって企業秩序を乱したと捉えられても仕方ないと思います。常務に恩を受けていた勢力もあることでしょうし。功罪相まって
 「出向を命じる!」
 復讐は誰をも幸福にしない。

2.「反省文」を取ったとしても

 法的な問題よりもっと根本的に、その始末書がほんとうに心のこもったものなら別として、それを形式的に取っただけで一件落着となるものではありません。
 次のような定型化した始末書が多く見られます

<問題を起こした団体のエライ人の記者会見の例>

「二度と/このようなことが/起こらないよう/
再発防止策/を検討したうえ/それに向け/努力して/参りたい/と存じます。」

・「〜が起こらないよう」とは、自分の責任外で自然災害のように勝手に「起きてしまった」という意味です。
・「検討する」とは、「実行するとは言っていない」という意味です。
・「それに向け」「努力する」とは、「達成するとは言っていない」という意味です。
・「参りたい」「存じます」とは、「そうしたい気持ちが心になかにはあるけど、実際に手足を動かすとは言っていない」という意味です。

 そして肝心の「再発防止策」は、不明なままです。

 意識せずとも、そのような曖昧言葉、腐れ言葉による「保身と責任逃れ」を真の内容(メタメッセージ)とする始末書をもらっても意味はありません。

 問題を起こす度、マイドキュメントのなかの自作の始末書モデル文書の「日付」と「固有名詞」だけ代えて、当然のように提出してくる剛の者もいます。
 それで罪が贖われると思われたら、ますます始末書の意味はありません。労務管理としてマイナスです。

3.されど始末書
 
 始末書提出命令が有効か無効かで争うよりも、懲戒規定は

(1)戒告:文書をもって行為を咎め、将来を戒める。
(2)減給:文書をもって行為を咎め、将来を戒めると共に、(〜減給とし〜)。

 の方が無難です。

 その文書は「正・副」とし、会社が企業秩序維持のために不作為をしてこなかった証拠として「副」を保管しておきましょう。

 されども、後で
 「そんなコトした覚えはありません」
 「記憶にございません」とされるのではなく
 事実をあらためて本人が詳細に自白したものとして捨てがたいものです。
 また、真摯に反省してより良い社員になってくれるかもしれません。

 懲戒のための懲戒ではなく、懲戒処分とは別の、経営の本来の責務である会社の企業秩序を維持し、改善していくための、「始末書」という名前の「顛末書及び再発防止計画書」を重要な業務上の指示命令として提出させることをお勧めします。
 もちろん提出根拠がある限り、提出拒否は別の懲戒対象です。

 事実を状況・経緯や原因とそれによる必然的な結果を記述させ、その上で再発防止策を提案させます(実にこのほうが、下手な反省文よりキツイことです)。

「(私が)上記のようなことを2度と起こさないための再発防止策は、具体的に以下の通り
(1)〜
(2)〜
(3)〜」

 それで「強化する」とか「徹底する」とか書いてきたら、
 「具体的には考えていません」という意味なので、もっと深く考えてもらいましょう。

(阿世賀 陽一)