〜当事務所から顧問先様などへの「お知らせ」と「お役立ち情報」です。

労務の震災対策

 東日本大震災で被災された方々に、心よりお見舞い申し上げます。
 また、顧問先の経営者・社員の皆様も、この未曾有の状況にあって、大変なご苦労を重ねられているものと拝察いたします。

1.失業手当の特例(災害救助法指定地域)

 今回の地震により事業の継続が困難となった災害救助法指定地域の事業所から一時的に離職せざるを得ない方の生活を保障するため、事業再開後の再就職が予定されている方であっても、雇用保険の失業給付を受給できる特例措置が実施されています(3月12日通達)。

2.失業手当の特例(激甚災害と指定地域)

 さらに、激甚災害と指定された被災地で、事業所が災害を受けたため、やむを得ず休業することになり、社員が働くことができず賃金を受けることができない状態にあるときは、特例として実際に離職していなくても失業しているものとして認定され、雇用保険の失業手当を受給できます(3月13日通達)。

3.雇用調整助成金の特例(災害救助法適用地域)

 平成20年の12月から支給要件の大幅な緩和と支給額の大幅アップが続き、全国で活用されてきた「雇用調整助成金(中小企業向けには助成内容を拡充して名称は「中小企業緊急雇用安定助成金」)」は、経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、従業員の雇用を維持するために、一時的に休業等を行った場合、その休業等にかかる休業手当相当額などの一部(中小企業では原則80%)を助成する制度です。

 この制度は、今回の東日本大震災にともなう「経済上の理由」で、生産量・売上の減少など、事業活動が縮小した場合にも利用できます。
 すでに昨年、一昨年に利用している事業主でも利用できます。

 具体的には以下のような事例が考えられます。

○交通手段の途絶により、社員が出勤できない、原材料の入手や製品の搬出ができない、来客が無い等のため事業活動が縮小した場合

○事業所、設備等が損壊し、修理業者の手配や部品の調達が困難なため早期の修復が不可能であり生産量が減少した場合

○避難指示など法令上の制限が解除された後においても、風評被害により観光客が減少したり、農産物の売り上げが減少した場合

○計画停電の実施を受けて、事業活動が縮小した場合

 なお、東日本大震災を直接的な理由(避難勧告・避難指示など法令上の制限を理由とする者等)とした事業活動の縮小については、対象になりません。

 利用するには、休業する前に「休業等実施計画届」などを労働局またはハローワークに届け出なければなりません。それが最大のポイントです。

 「事業活動が縮小」ということは、最近3か月の生産量・売上高等がその直前の3か月、または前年同期と比べ5%以上減少していると言うことです。

 これは、3か月すべてが5%以上減少していると言うことではなく、3か月の「平均」が5%以上減少していれば対象になると言うことです。2か月が直前並または前年並みでも、1か月15%以上減少なら、活用できると言うことです。

 今般、被災地域である青森県・岩手県・宮城県・福島県・茨城県のうち災害救助法適用地域に所在する事業所の場合は、今回の地震にともなう経済上の理由により最近1か月の生産量・売上高等がその直前の1か月、または前年同期と比べ5%以上減少していれば対象になることになりました。

 そして平成23年6月16日までの間は、震災後1か月の生産量・売上高等がその直前の1か月、または前年同期と比べ5%以上減少する見込みであっても対象になります。

 さらに6月16日までの間に提出された計画届は、地震のあった3月11日以降の日に、事前に届け出をしたものとして扱われます。

 対象期間は、初回「計画届」の届出の際に事業主が指定した平成23年3月11日以降の日から1年間です。(3月17日通達)

 この助成金については、他に以前にお知らせした「事業所内で行う教育訓練費」の支給額引き下げについて、厚生労働省より一部訂正があります。
 「平成23年4月1日以降の支給申請分から」引き下げとされていましたが、「判定基礎期間の初日が平成23年4月1日以降分から」引き下げとなりました。
 支給申請の際はご注意ください。

 尚、この助成金は「休業」等に対するものなので、前項の「失業したものとみなす」という失業手当の特例や、次項の「労基法に定められた休業には該当しない」という解釈と併用できるものではありません。

4.計画停電による休業の取扱い(関東圏)

 現在、関東圏(栃木県・群馬県・茨城県・千葉県・埼玉県・東京都・神奈川県・静岡県・山梨県)では、東京電力による「計画停電」が実施されています。

 「停電による休業の取扱い」に関しては、厚生労働省から各都道府県労働局に次のような通達が出ています(3月15日)。
 その要旨は、次の通りです。

(1)計画停電の時間帯における事業場に電力が供給されないことを理由とする休業については、原則として労基法に定められた「使用者の責めに帰すべき事由による休業」には該当しないものとする。
そのため使用者は、その期間中(時間中)その労働者の平均賃金の100分の60以上の手当を支払う義務はない

(2)計画停電の時間帯以外の時間帯の休業は、原則として「使用者の責に帰すべき事由による休業に該当する。

 ただし、計画停電が実施される日において、計画停電の時間帯以外の時間帯を含めて休業とする場合であって、他の手段の可能性、使用者としての休業回避のための具体的努力等を総合的に勘案し、計画停電の時間帯のみを休業とすることが企業の経営上著しく不適当と認められるときには、計画停電の時間帯以外の時間帯を含めて原則として「使用者の責に帰すべき事由による休業」には該当しないものとする。

(3)計画停電が予定されていたため休業としたが、実際には計画停電が実施されなかった場合については、計画停電の予定、その変更の内容やそれが公表された時期を踏まえ、上記@及びAに基づき判断する。

5.労災保険給付手続きの弾力的運用

 通常、労災保険給付を請求するときには「所定の様式」に「事業主の証明」、さらに休業補償給付請求や別の医療機関に転医する場合などには「診療担当者の証明」の記載が必要になります。
 今回の地震によって所属事業場や医療機関が焼失・倒壊などして、それが困難なときは、「任意の用紙」に傷病労働者の氏名・生年月日・住所、事業の名称、事業場の所在地、災害発生年月日、簡単な災害発生状況、指定病院等名称所在地などを記載し、「東北地方太平洋沖地震により事業主の証明不可」、「東北地方太平洋沖地震により診療担当者の証明不可」と記入すれば受理されます(3月14日通達)。

[地震と労災]

 労災保険の業務災害の認定には、業務遂行性(仕事中)、業務起因性(仕事が原因)であることが要件ですが、地震の場合、それが「天災地変による災害であるから直ちに業務起因性がない」というわけではなく、被災労働者が作業方法・作業環境・事業場施設の状況などからみて「危険環境下にある(例えば、建物が弱かった)ことにより被災したものと認められる」場合には、業務上の災害として取り扱われます。
 また、通勤災害についても、業務災害と同様に、通勤に通常ともなう危険が現実化したものと認められれば、通勤災害として取り扱われます。

6.労働・社会保険料について

 被災地域にある事業所について、社会保険(厚生年金・健康保険・こども手当拠出金)の保険料、及び労働保険料の納付期限の延長及び猶予するよう日本年金機構、地方厚生(支)局、及び労働局長に通知されています(3月12日〜14日)。

  その他(これは会社の労務ではありませんが)、被災地の病院にかかっていた「患者」については、医師からの処方せんが無い場合でも、医薬品の販売・授与が可能となるように連絡されています(3月12日)。

 詳細またはご不明な点がございましたら、当事務所へご連絡下さい。

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