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労働契約法の改正(有期労働契約)の解説

 この春から、出そうで出なかった労働契約法の一部、パートタイム社員や契約社員などに対する「有期労働契約の部分」の改正法が、消費税政局からオリンピックに続くさなかの、平成24年7月3日に成立し、8月10日に公布されました。
 当初論議されていた有期労働契約そのものを制限する「入口規制」は見送られ、入れた後に雇用調整をしにくくなる「出口規制」といえるものになっています。
 改正のポイントは、以下の3つです。

(1)有期労働契約の終了(雇止め)を認めない判例の法定化

 有期労働契約を更新しないことによる「雇止め」が有効(=期間満了退職)か無効(解雇→不当解雇)かのトラブルになったときの判例を、法律に制定したものです。
すなわち、

[1]有期労働契約の反復更新によって、その契約を「更新拒否」することが、正社員など期間の定めのない労働者を「解雇」するのと社会通念上「同視できる」と認められること

[2]有期労働契約の期間満了時に、その契約が「更新されるもの」と本人に「期待させる」ことに合理的理由があると認められること

 この2つのいずれかに該当する場合で、その本人が会社に「契約更新」の申込みをしたとき、使用者は、それを拒絶することに客観的に合理的な理由や社会通念上相当であると認められるものがない限り、その申込みを「承諾したもの」とみなされます。

 判例の「解雇法理を適用する」という回りくどい言い方ではなく、この「承諾したものとみなす」とは、ずいぶんストレートな表現です。

 施行日は、すでにある程度判例として実効性があるためか、公布日と同じく8月10日です。

 今後、判例を知らない人にも波及効果が出てくるでしょう。

(2)有期労働契約の期間の定めのない労働契約への転換

 これまでは、更新手続きがしっかりしていれば、何回・何年更新しても、それをもって直ちに有期労働契約が無効であるとはされていませんでしたが、ついにその時が来ました。
 すなわち、
 有期労働契約が通算して5年を超えて反復更新された場合で、その本人が会社に「期間の定めのない(=定年までの)労働契約」の申込をしたとき、使用者はその申込みを「承諾したもの」とみなされます。

 そのときの賃金等の労働条件は、別段の定めがない限り、そのまま正社員と同じにする必要はなく、従来と同一の労働条件で問題はありません。ただし、後述(3)の「不合理な労働条件の禁止」について考慮する必要があります。

 契約期間の間に、原則として6カ月以上の「空白期間」があるときは、その前の契約期間は通算されません。
 この「空白」とは、逆に言えば「連続していると認められるものではない」と言うことです。その基準は厚生労働省令で定められます(具体的詳細はこれからです)。
 この「6カ月」のクーリング期間については、通算された前の期間が1年未満の場合は、その期間の2分の1を「基礎として厚生労働省令で定める期間」(ブンガクですね。具体的詳細はこれからです)とする例外もありますが、ただ契約期間を短くしても通算されるので、クーリング期間がそのまま短くなるわけではありません。
 この施行日は、8月10日から起算して1年を超えない範囲内において、政令で定める日とされています。
 「5年」の通算のスタートは、この施行日以後の労働契約からです。

(3)期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止

 これはパートタイム労働者等への差別的な「取扱いの禁止」を有期の労働契約そのものに拡張したものです。
 すなわち、
 有期契約労働者の労働条件が、正社員など期間の定めのない労働者の労働条件と違う場合、その違いは、業務の内容、それに伴う責任の程度、配置の変更の範囲その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならないとされます。 
 この施行日も、8月10日から起算して1年を超えない範囲内において、政令で定める日です。

 「連続と空白」や「クーリング期間」などの具体的詳細については、これから各界の法解釈による諸説とそれに対する省令とのやりとりがあることでしょう。

 この法改正の主旨は、いわゆる非正規労働者を「期間の定めのない労働契約に転換させる仕組みを設ける」ことにあります。
 今、「正社員と非・正社員」だけではなく、ボーダレスな「短時間正社員」という雇用形態が普及しつつありますが、それに続いて、業種によっては「期間の定めのない準社員」などという新しい人事区分、そして「正社員登用制度」、新たな等級制度と昇格基準など、人事政策の見直しが必要性になってくるでしょう。

 非正規労働者の問題は、「業務の内容、それに伴う責任の程度、配置の変更の範囲」等、裏返せば「正社員とは何か?」という問題でもあります。

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